処分性・原告適格・訴えの利益の消滅

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行政訴訟の第一関門(訴訟要件)の3つ(処分性・原告適格・訴えの利益)の不合理に対峙する、まさに阿部節全開の解釈法学論文集。

著者 阿部 泰隆
ジャンル 法律  > 行政法
出版年月日 2021/02/26
ISBN 9784797236736
判型・ページ数 A5変・520ページ
定価 8,800円(税込)
在庫 在庫あり

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行政訴訟を門前払いする「三種の神器」とは
 
行政訴訟を門前払いする、「三種の神器」=処分性・原告適格・訴えの利益。行政訴訟は原告から見ればまさに「障害物競走」、被告から見れば強大な「防波堤」である。行政訴訟の第一関門(訴訟要件)の3つ(三種の神器)の不合理に対峙する、まさに阿部節全開の、渾身の解釈法学論文集。
 
目  次

 はしがき

◆第1部 行政訴訟要件(処分性・原告適格等)に関する発想の転換

◇第1章 行政訴訟における訴訟要件は原告には大きな障害物・被告のための巨大な防潮堤
Ⅰ 訴訟要件の厳格な運用は原告の裁判を受ける権利の侵害
Ⅱ 本書の課題――裁判を受ける権利の包括的実効性の保障を基本に

◇第2章 処分性の柔軟化の必要,処分性と訴訟類型に関する伝統的な発想の誤謬
第1節 処分――抗告訴訟の特殊理論の廃棄を
Ⅰ 処分性の概念の意味
Ⅱ 先例の射程範囲を限定せよ
Ⅲ 処分の効力論・排他性・不可争力・違法性の承継否定論の誤り
Ⅳ 法律上の争訟に該当すれば,処分概念にこだわらずに救済を
第2節 境界事例の解釈――処分性を拡張すべき事例
Ⅰ 早期救済の必要――「早すぎる,遅すぎる」で,どこでも救済しないことはあってはならないこと
Ⅱ 職権による行為に申請権を認めよ=拒否は処分扱いに
Ⅲ 一般処分の処分性――保安林の指定解除を例に
Ⅳ 放射能被ばくの上限を定める通知・除染
Ⅴ 法令に基づかない給付行為
Ⅵ 公表に対する救済方法
Ⅶ 入札に対する救済
Ⅷ 勧告に対する争訟方法
第3節 訴訟対象・訴訟類型判定困難対策(処分性を含めて)
Ⅰ 裁判を受ける権利こそ重視を
Ⅱ 判定困難事例の検討

◇第3章 原告適格の緩和の要請
Ⅰ 「行訴法変われど,行政訴訟変わらず」
Ⅱ 侵害される利益の考慮の仕方
Ⅲ 法律の条文の過度の重視をやめよ
Ⅳ 「早すぎる,遅すぎる」
Ⅴ 線引きの負担
Ⅵ 「必然的に侵害」から「相当程度の確実さをもって侵害」へ

◇第4章 そのほかの訴訟要件拡大の要請――出訴期間の根拠は薄弱
Ⅰ 出訴期間
Ⅱ 被告適格の変更
Ⅲ 行訴法10条1項

◇第5章 訴訟要件を職権調査事項から被告の抗弁事項に
第1節 職権による予想外の判断は不当
Ⅰ 問題提起
Ⅱ 不当判例
第2節 民訴法の考え方
Ⅰ 民事訴訟の原則
Ⅱ 筆者の誤解の修正
第3節 行政訴訟の特殊性に応じた解決

◇第6章 訴訟要件を充足する事実に関する原告の立証責任の緩和
Ⅰ 行政訴訟の訴訟要件は,原告に厳格な立証を要求するような事案ではない
Ⅱ 職権主義の活用の仕方
Ⅲ 原告の立証責任の緩和を求める裁判官と判例の見解

◇第7章 最後に,お願い

◆第2部 いわゆる処分性の考え方の転換

◇第1章 処分性のあるべき考え方
第1節 筆者の提唱=訴訟類型への分配のほか,争点ごとの成熟性・権利救済の実効性の判断
第2節 越智敏裕のアメリカ法の研究の示唆
第3節 相対的行政処分論へのコメント

◇第2章 最近の処分性拡大判例ないし拒否判例の分析
第1節 最高裁の変化
第2節 食品衛生法上の通知の処分性=最判平成16年4月26日
Ⅰ 法システム
Ⅱ 処分性を認めた最高裁判決
Ⅲ 私  見
第3節 医療法に基づく勧告(警告)の処分性=最判平成17年7月15日
Ⅰ 法システムと法廷闘争
Ⅱ 裁判所の判断
Ⅲ 私  見
第4節 土地区画整理事業計画の処分性=最大判平成20年9月10日 
Ⅰ 判例変更
Ⅱ 大法廷意見の分析と筆者の善解
Ⅲ 補足意見の分析
第5節 2項道路の包括(一括)指定=最判平成14年1月17日
Ⅰ 制  度
Ⅱ 本件判決
Ⅲ 私  見
第6節 要綱に基づく就学援護費の処分性=最判平成15年9月4日
Ⅰ 論点:要綱に基づく給付拒否の処分性いかん
Ⅱ 最判:制度の柔軟な解釈による処分性肯定
Ⅲ 考  察
第7節 都市計画法上の公共施設管理者の不同意の処分性=最判平成7年3月23日批判
Ⅰ 論点と経緯
Ⅱ 従来の下級審判例と学説
Ⅲ 最高裁判決=処分性否定説
Ⅳ 最高裁判決批判
Ⅴ 平成25年高松高判
第8節 君が代斉唱・国歌起立東京高判の誤り,通達の処分性を突如肯定・差止訴訟却下の誤り
Ⅰ 東京高判平成23年1月28日の要点
Ⅱ 無名抗告訴訟としての本件公的義務不存在確認訴訟の適法性いかん
Ⅲ 通達の処分性肯定は権利救済を拡大?
Ⅳ 通達の処分性肯定の誤り
Ⅴ 義務不存在確認訴訟の確認の利益について
Ⅵ 判決の対世効は口頭弁論終結後の校長に及ぼすという意味がある?
Ⅶ 本件差止訴訟は許されない?
Ⅷ 本案の判断は驚くべき論法
Ⅸ 最高裁による破棄自判
第9節 検察審査会の強制起訴議決の処分性(小澤一郎裁判)
Ⅰ 強制起訴議決は刑事訴訟で争えとの裁判
Ⅱ 私見:検察審査会の強制起訴議決に処分性あり
Ⅲ 検察審査会は行政庁か
第10節 判例の評価

◇第3章 訴訟類型・処分性に関するその他の個別判例の検討

第1節 丸刈り校則に対する早期の救済方法の必要――処分性と入学前の生徒の原告適格
Ⅰ 要  旨
Ⅱ 事案の概要
Ⅲ 判  旨
Ⅳ 解  説
・関連論文 男子中学生丸刈り校則――生徒の人権と専門裁量
Ⅰ はじめに
Ⅱ 憲法上の根拠と専門裁量
Ⅲ 中学生に丸刈りを強制する根拠の奇弁
Ⅳ 事実上の侵害の軽視――強制手段を使わないから合法か
第2節 住民票における非嫡出子記載に対する争訟方法,国家賠償責任
Ⅰ 是正措置を求める訴訟方法
Ⅱ 国家賠償責任
第3節 京都府営水道の基本水量決定は処分か契約上の行為か
Ⅰ はじめに
Ⅱ 本件条例第2条第2項に基づき京都府知事がした基本水量決定の法的性格――本件基本水量決定は,行政処分か契約上の行為か
Ⅲ 京都府営水道乙訓浄水場(仮称)に係る施設整備等に関する協定書の法的効力
Ⅳ 本件被告京都府の主張について

◆第3部 原告適格に関する判例と私見

◇第1章 第3部の内容
Ⅰ 私見の要点
Ⅱ 本章で取り上げる事案
Ⅲ 無限の学説
Ⅳ 関連論文5
◇第2章 鉄道運賃値下げ命令義務付け訴訟における鉄道利用者の原告適格及び本案の理由
Ⅰ はじめに
Ⅱ 近鉄特急料金訴訟最高裁判決は当時としても不適切な判例であったこと
Ⅲ 判例理論の説得力の乏しさ
Ⅳ 他の判例との関連
Ⅴ 改正行訴法のもとでの原告適格の解釈
Ⅵ 国の反論の乏しさ
◇第3章 競業者訴訟――一般廃棄物処理業の新規許可取消訴訟における既存処理業者の原告適格等
Ⅰ はじめに:本章の要点
Ⅱ 原告適格の一般論
Ⅲ 廃棄物処理法における既存業者の原告適格
Ⅳ 本案における問題点:裁量があるとしても,合理的な考慮をしなければならないこと
Ⅴ 原審名古屋高裁金沢支部平成22年(行コ)第16号平成23年6月1日判決の検討
◇第4章 環境訴訟
第1節 小田急訴訟
Ⅰ 小田急高架化事業認可取消訴訟――地裁・高裁判決の原告適格,裁量統制
Ⅱ 小田急高架化事業認可取消訴訟最高裁大法廷判決の原告適格論
第2節 場外車券発売施設設置許可処分における周辺住民・医療機関の原告適格(いわゆるサテライト訴訟)
第3節 大間原発許可に対する函館市の提起する抗告訴訟――法律上の争訟,原告適格
Ⅰ はしがき
Ⅱ 法律上の争訟
Ⅲ 原告適格
◇第5章 原告適格に関するその他の個別判例研究
第1節 ジュース訴訟――消費者団体の原告適格
Ⅰ はじめに
Ⅲ 不服申立ての利益の意義
Ⅲ 景表法の目的と消費者保護
Ⅳ 実際的解決
第2節 第1種市街地再開発事業における借地権者に対する権利変換処分の取消しを求める宅地所有者の原告適格及び審査請求前置主義
Ⅰ 原告適格の拡張?
Ⅱ 取消判決の拘束力の範囲
Ⅲ 権利救済の落とし穴
Ⅳ この判決の評価
第3節 新潟空港訴訟:航空法の事業免許を争う近隣住民の原告適格
Ⅰ 大阪空港訴訟大法廷判決の尻ぬぐい=行政訴訟を認める
Ⅱ 原告適格の考え方
Ⅲ 騒音防止規定は本案の違法事由を導くか
Ⅳ 事業免許の取消訴訟は使えるか
Ⅴ 原告適格の具体的な判定
第4節 伊場遺跡訴訟――研究者の原告適格
Ⅰ 判例の立場
Ⅱ 先例の分析
Ⅲ 「法律上保護された利益説」の分析
Ⅳ 埋蔵文化財の指定解除と学術研究者の地位
Ⅴ 団体訴訟に関する文献

◆第4部 訴えの利益の消滅対策

◇第1章 外国法制の示唆

◇第2章 日本法の工夫
第1節 種々のアイデア
第2節 繰り返し許可が更新された場合における許可期間徒過後の取消訴訟の許可取消しの利益
Ⅰ 論  点
Ⅱ 期限は形式的なもので許可本体は継続

◇第3章 判例研究
第1節 保険医指定制度廃止後における保険医指定取消処分の取消しを求める訴えの利益
第2節 公有水面埋立工事が完了し原状回復が著しく困難である場合と埋立免許処分無効確認訴訟の利益――事情判決との関係
第3節 土地改良事業の工事等が完了して原状回復が社会通念上不可能となった場合と右事業の施行の認可の取消しを求める訴えの利益の帰すう

  ・事項索引
  ・判例索引

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