憲法の原理と解釈

学術選書 190

憲法の原理と解釈

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憲法現象の動態性から、その成長と発展、そして変化の可能性を考察。憲法の理論と現象をその原理と解釈の面から検討する。

著者 棟居 快行
ジャンル 法律  > 憲法
シリーズ 法律・政治  > 学術選書
出版年月日 2020/01/30
ISBN 9784797267907
判型・ページ数 A5変・580ページ
定価 9,680円(税込)
在庫 在庫あり

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憲法現象の動態性から、その成長と発展、そして変化の可能性を考察
  
憲法現象の動態性から、その成長と発展、そして変化の可能性を考察。人権と統治それぞれについて、憲法の理論と現象をその原理と解釈の面から検討。学問的進歩の道標となる、リアルな憲法論。『人権論の新構成』、『憲法学再論』、『憲法学の可能性』に続く、著者4作目の待望の論文集。
 
『憲法の原理と解釈』

 棟居快行(専修大学法科大学院教授)著


【目 次】

・はしがき

◆第Ⅰ部 憲法の原理 ―人権編―

◆第1章 具体的人間像を求めて
Ⅰ 国民主権の構成要素としての「抽象的人間像」
 1 「樋口モデル」による人権保障の国民主権原理への取り込み
 2 「樋口モデル」により排除される「中間団体」と「人民」
Ⅱ 人権享有主体としての「具体的人間像」―「弱さ」を「強さ」につなぐもの
 1 具体性としての「弱さ」と社会関係を通じた「強さ」への転化
 2 社会関係を結ぶ手段としての人権,あるいは自由の踊り場としての「中間団体」
Ⅲ 人権論の文法の主語としての「強い個人」―ふたたび「強さ」を求めて
 1 「弱い個人」は必然か
 2 述語としての「弱い個人」
 3 主語としての「強い個人」
Ⅳ 憲法と憲法学の使命としての「良き公共空間」
 1 「良き公共空間」の番人としての憲法と憲法学
 2 「良き公共空間」とパラレルな存在としての憲法裁判
 3 主権者が常在しないことの代償としての権力分立と公共空間
Ⅴ 公共空間と個人の「弱さ」
 1 「公共空間におけるプライバシー」という問題の意味
 2 公共空間における「やせ我慢」としての強さ
Ⅵ 具体的人間像と人権の制約
 1 司法審査と具体的人間像
 2 利益衡量論と具体的人間像
Ⅶ むすびに代えて

◆第2章 グローバル化の中の憲法
Ⅰ ベルリンシンポジウムでの報告レジュメの再録
Ⅱ 「グローバル化の中の憲法」という問題の再定立―国際人権の観点から
 1 ベルリンシンポでの筆者の立場―国家主義のゆらぎ
 2 グローバル化の随伴者としての国際人権?
 3 国家権力がグローバル化に抗するために人権の保護義務を標榜するシナリオ
Ⅲ グローバル化による人権論の新展開の可能性
 1 前節のまとめ
 2 グローバル化の派生現象としての人権論と司法権のゆらぎ
 3 私人間効力論への飛び火
 4 司法権の自律化と越境による国家権力の二分化
 5 国家権力の二分化の肯定面と行政権の位置づけ
 6 再び私人間効力論について―問題の再整理
 7 「公序良俗」のガラパゴス的運用という弊害の可能性と「私法のイスラム法化」
 8 グローバル化が人権論にもたらし得るもの―小括

◆第3章 プライバシー権の来し方・行く末
Ⅰ 問題の所在
 1 「新しい人権としてのプライバシー権」の意味するもの
 2 本章の目的
Ⅱ プライバシー権の現況
 1 「論じられ方」の問題点
 2 「宴のあと」事件判決が示したHow
 3 (行政)個人情報保護法が制度化したHow
 4 学説の現況と自己イメージコントロール権の浸透
Ⅲ 「情報化社会」の徹底と公権力の変貌―高権的命令権力から選択肢の提示者へ
 1 公権力の変貌
 2 公権力の正当化基盤の変容
 3 無数の選択の集積としての「個人」
Ⅳ プライバシー権論の展開
 1 私生活の平穏
 2 情報化社会における個人の自律
 3 自己情報コントロール権説の目標としての正確な情報の権原ある収集
 4 自己情報コントロール権説の論者の意図と同説の機能とのズレ
 5 自己情報コントロール権説は自己イメージコントロール権説に帰着する
Ⅴ 情報化社会からリベラルで多元的な社会へ
 1 自己イメージの自由な表出が可能にするリベラルで多元的な社会
 2 多元的な社会形成の自由としての自己イメージコントロール権
 3 多元的社会において個人に留保されるべき人格的自律権とその敵
Ⅵ インターネット・SNSの発展とプライバシー権の展開
 1 インターネット上の「忘れられる権利」
 2 「細分化された疑似公共圏」の創出―ツイッターの場合
 3 「拡大された疑似親密圏」の創出―フェイスブックの場合
Ⅶ プライバシー権の行く末―結びに代えて
 1 社会関係形成の自由としてのプライバシー権の確立
 2 残された難問

◆第4章 表現の自由の意味をめぐる省察
Ⅰ 問題の所在
 1 表現の自由の力
 2 「制度の相対化」と表現の自由
Ⅱ 制度の変化と表現の自由の機能
 1 「制度」の意味
 2 「制度」の進化と突然変異
 3 制度内の表現の自由/制度外の表現の自由
 4 表現の自由/近代立憲主義/国家の三位一体
Ⅲ 表現の自由の制約法理
 1 表現規制立法の根拠
 2 私的表現の規制可能性とその根拠
 3 表現内容中立規制
Ⅳ ネット社会におけるパブリックフォーラム
 1 パブリックフォーラム論の前提の喪失?
 2 ネット上の仮想パブリックフォーラム
 3 準パブリックフォーラムとしてのパブコメのあり方
Ⅴ 政府言論
 1 政府による意見表明の自由?
 2 積極的な「政府言論」は許されない
Ⅵ 表現の自由と立憲主義の将来
 1 ネット社会における新しい公共空間の登場
 2 ネットを立憲主義の破壊的イノベーションにどう取り込むか

◆第5章 国際人権条約と国内法ネットワークの自己組織化―障害者差別解消法の成立を契機として
Ⅰ 問題の所在
 1 国際人権の国内実施―立法レベルでの受容の重要性
 2 立法ネットワークを通じた人権条約の国内実施
 3 立法ネットワークを通じた障害者権利条約の受容
Ⅱ 国際人権条約の国内法秩序への「編入」の意味
 1 国内法秩序の適応としての人権条約の編入
 2 客観法としての編入
 3 人権条約の「受容」ないし「編入」に伴う困難
Ⅲ 立法ネットワークと司法ネットワークの相違点
 1 国内法体系の二側面
 2 フローの制御としての立法ネットワーク/ストックの制御としての司法ネットワーク
 3 フローとしての立法過程の自己拘束のための「整合性」とその由来
 4 近時の最高裁違憲判決における整合性審査
Ⅳ 二つのネットワークの対話?
 1 両者の接近傾向
 2 最適化要請
Ⅴ 司法ネットワークの新たな可能性―むすびに代えて
 1 グローバル化時代における司法ネットワークの可能性
 2 司法の自律的「ネットワーク」

◆第6章 大規模災害と権利保障
Ⅰ 問題の所在
 1 はじめに(2013年10月の日本公法学会にて)
 2 1998年の公法学会での議論から
 3 私見の既発表の論旨
 4 阿部教授の98年公法学会報告へのコメント
 5 憲法学による自然災害の論じ方
 6 テロと自然災害の相違点
 7 自然災害における国家の責務?
 8 偶然の損失と個人/国家の負担
Ⅱ 大規模自然災害は人権論にかかわるか―自由権の場合
 1 偶然の損失に対する人権論の出番
 2 自由権的アプローチと生存権的アプローチ
 3 自由権的アプローチにおける前提理解―生命/自由/幸福追求の分割
 4 三分割論への予想される批判と反論
 5 生命/自由/幸福追求と防災―救護―復旧―復興の対応関係
 6 防災・救護の段階での国の生命に対する保護義務
 7 復旧段階での自由の条件に対する国の保護義務
 8 復興段階での幸福追求に対する国の介入権限の不存在
 9 具体的帰結
 10 客観的制度的な「自由の条件」としての自由権
 11 国の保護義務の対象としての客観的制度的な「自由の条件」
 12 災害で失われた私財の補償について
 13 幸福追求権と国家―介入権限/保護義務の否定
Ⅲ 大規模自然災害は人権論にかかわるか―社会権の場合
 1 自然災害と社会権
 2 自然災害の特殊性を考慮に入れた生存権論の必要性
 3 「社会」権としての生存権論の必要性
Ⅳ 原発災害についての視点とそこから自然災害について得られるもの―付言
 1 原子力発電が内包する「リスク」の顕現としての事故
 2 リスクから導かれる補償責任

◆第Ⅱ部 憲法の原理 ―統治編―

◆第7章 立憲主義の条件―非歴史的省察
Ⅰ 立憲主義という企て
 1 立憲主義と規範の無欠缺性
 2 立憲主義的憲法の特徴
 3 立憲主義を「権力の制約」と同視する傾向の弊害について
Ⅱ 立憲主義と憲法改正
 1 憲法改正権限の特殊性と憲法改正のパラドックス
 2 パラドックスの解消その1―憲法改正条項の特権化
 3 パラドックスの解消その2―すべての憲法規範の最上位性の喪失
 4 憲法改正条項の特権性の剥奪と改正限界
 5 改正限界と「憲法改正条項」の拡大的把握
 6 憲法改正条項の改正可能性
 7 改正条項の改正による無限後退とその無問題性
 8 改正条項を特権化することの問題点
 9 憲法改正条項の改正が意味するもの―憲法制定権力との絶縁
 10 改正権者の変更を伴う改正条項の改正について―例外的ケース
 11 改正権者の変更を伴わない改正条項の改正について―通常のケース
 12 憲法改正条項は改正不能か?―改正可能性の弁証
 13 「憲法改正条項の改正不能性」を説くことの損益
 14 立憲主義の「日常化」に向けて
 15 「護憲」と「立憲主義の日常化」の間
 16 憲法と立憲主義の「日常化」時代における憲法学の課題
Ⅲ 立憲主義の自律化のための条件―憲法制定権力と個人の尊厳のはざまで
 1 「授権の始点としての憲法」とその蹉跌
 2 「もうひとつの立憲主義」の可能性
 3 「もうひとつの立憲主義」の成立条件
 4 立憲主義の水平的把握
 5 「ヨコの立憲主義」の審判としての裁判所
 6 選挙無効訴訟における最高裁の「ヨコの立憲主義」への傾斜
 7 憲法の構造化の極点―「憲法制定権力」と「個人の尊厳」
 8 メタ統治機構的な力としての「憲法制定権力」
 9 メタ人権保障ないし個別人権の物差しとしての「個人の尊厳」
 10 「もう一つの立憲主義」のために

◆第8章 憲法改正要件論の周辺
Ⅰ はじめに
Ⅱ わが国の憲法改正についての憲法学説の基本的前提
 1 憲法改正についての標準的な学説内容
 2 改正限界説・無限界説の対立と両者に共通する前提
 3 改正限界の有無を決するものとしての論理と文理
Ⅲ 時間のなかの憲法改正
 1 憲法改正を時間の流れのなかで捉える視点)
 2 解釈の限界へのリアクションとしての憲法改正
 3 プロセスとしての憲法改正
 4 連続性としての改正のなかの非連続性
 5 通説に見られる2方向と憲法改正の2つのタイプ
Ⅳ 第96条の要件の意義
 1 「3分の2」という発議要件の意義
 2 第96条の国民投票要件の意義その①
 3 第96条の国民投票要件の意義その②
 4 憲法改正の2態様それぞれとの関わりにおける第96条
Ⅴ おわりに

◆第9章 統治権としての司法権―最高裁は「越境」しうるか?
Ⅰ 問題の所在
Ⅱ 司法審査観・憲法観としてのタテとヨコ
 1 司法審査の二つのモデル(181)
 2 ヨコの権力分立における司法審査―プロセス理論の前提
Ⅲ タテの司法審査観・憲法観としての法段階説
 1 タテ構造の二様―規範内容の具体化と授権の連鎖と
 2 タテの司法審査観・憲法観の理論構造と「憲法の番人」
 3 タテの法段階説的な司法観察観・憲法観の稠密化
Ⅳ ヨコの司法審査観・憲法観の可能性
 1 ヨコの平面上での「憲法の優位」
 2 アドホックな紛争解決手段としての司法審査
 3 法段階説に依拠しない「憲法の優位」
Ⅴ 「法を語る口」としての司法権―「第三の道」
 1 判例実務における司法審査観・憲法観
 2 立法裁量に「首尾一貫性」を要求する近時の違憲判決
 3 「憲法を語る口」としての権利救済型司法審査観
 4 権利救済型司法審査観による「合理的な立法者」の召喚
 5 「適用審査」としての付随審査
 6 権利救済型司法審査論の居場所
Ⅵ 結びに代えて

◆第10章 グローバル化社会と憲法
Ⅰ 憲法学はグローバル化を語りうるか?
 1 語り得ぬことを語る
 2 法概念としての「国民主権」ないし「国民」とグローバル化
 3 「国家主権」といった事実概念によるグローバル化の記述も困難であること
 4 対テロリズムと主権国家の融解
Ⅱ 「グローバル化社会」が憲法と対峙するということの意味
 1 「グローバル化社会」という用語の意味するもの
 2 「グローバル化社会」は国家からの解放か?
 3 国家なき社会の風景
 4 司法権のグローバル化社会への順応性
 5 司法の国法秩序からの解放がもたらすもの
Ⅲ 憲法学における主権国家vs.グローバル化の一局面―樋口モデルと新無効力説
 1 「樋口モデル」のグローバル化の下での困難
 2 「樋口モデル」のアレンジによる間接適用説との符合
 3 無効力説の復活とグローバル化社会
 4 小 括

◆第11章 グローバル化が主権国家にもたらすもの
Ⅰ 市場の普遍化の反面としての主権の退潮
 1 市場が容易に境界を超えるのに対して主権国家はそのようにはいかないこと
 2 グローバル化する市場と,それについて行けない領域的に閉じ込められた主権国家のズレがもたらす問題
   ―「檻の外」の無法と「檻の中」の無力
 3 主権国家の外的条件を市場が決定することにより,主権国家の自律性が喪失されること
 4 主権国家が単なる市場の1アクターにされることで,政治共同体としての性格を喪失すること
 5 グローバル市場に正義をもたらすさまざまの試みとその失敗
 6 主権国家の「連帯」による対処?
 7 刑事罰や民事制裁による脅し?
 8 金融活動への課税?
 9 主権国家そのものの拡張による対応の失敗―EUの政治統合と予想される新たな悲劇
 10 理性は勝利しないが欲望を拡散させることで市場を冷却化することはできる―ささやかな結び

◆第12章 憲法学とリスク
Ⅰ はじめに
Ⅱ 「リスク」と「危険」の区別
 1 不確実性としての「リスク」は「危険」とは異なる
 2 「リスク」はコントロール可能性がない
 3 「ロシアンルーレット」としての「リスク」
 4 リスク,危険,完成された技術
Ⅲ 法概念としての「リスク」と「危険」,あるいは国家による危険の「ブラックボックス化」
 1 結果志向的概念としての「リスク」と過程志向的概念としての「危険」
 2 「リスク」と「危険」のねじれ
 3 国家による意図的ブラックボックス化としての「リスク」
 4 国家によってブラックボックス化される他の事例
 5 受益と負担の分離の技法としての「リスク」
 6 国家の力の源泉としての「リスク」
 7 「リスク」としてブラックボックス化された大津波
 8 リスクとしてブラックボックス化された原発事故
Ⅳ 憲法学における「リスク」
 1 憲法学における「リスク」概念の不在
 2 先端的科学技術の法的規制の審査基準のあり方
 3 損失補償問題との類似性,ならびに「悪魔のくじ引き」の合憲性
 4 「悪魔のくじ引き」と「無知のヴェール」の相違
 5 「リスク」の居場所

◆第Ⅲ部 憲法の解釈 ―人権編―

◆第13章 基本権としての人権―「基本権訴訟」その後
Ⅰ 問題の所在
 1 かつての問題提起
 2 残された(あるいは始まらなかった)問題の所在
Ⅱ 「基本権訴訟」における「基本権」
 1 「基本権」のシンプルな内実―表現の自由を例として
 2 基本権レベルでの実体法と手続法の未分化
 3 憲法上の「基本権」―尊厳と要保護性を備えた「原初的基本権」
 4 「基本権」の統合性の回復のために―「三段階審査論」
Ⅲ 「基本権訴訟」の実像―司法による「基本権保護義務」としての
 1 司法による立法・行政のバックアップとしての「基本権訴訟」
 2 「基本権保護義務」の司法による履行としての「基本権訴訟」
Ⅳ 「基本権」の本質―連結器,および授権規範としての
 1 自然権と下位法の連結器としての基本権
 2 下位法への基本権実現の委託
Ⅴ 授権規範としての財産権保障―自然権と立法の連結
 1 財産権保障の保障形式―29条の自己矛盾?
 2 29条1項2項の関係
Ⅵ 授権規範としての表現の自由―自然権の基本権化と司法への委託
 1 表現の自由の保障形式―第一次的に立法委託でなく司法委託
 2 規制文言の明確性
 3 発話者の全人格と表現の自由
 4 表現の自由と利益衡量の親和性
Ⅶ 授権規範としての生存権保障―立法・行政,そして司法への委託
 1 生存権の保障形式―国の「行為」でなく「状態」に対する権利
 2 国の行為に着目する手法の顛末
 3 「状態」に対する権利としての再構成
 4 生存権の裁判上の救済―国家権力のアンカーとしての司法
Ⅷ 授権規範としての平等保障―立法・行政への委託と司法への直接の委託の複合
 1 法システムへの平等なアクセス権の保障―不合理な差別の禁止
 2 後段列挙事由による範疇的な差別の禁止―「人としてある状態」の保障
 3 障害者差別の解消―1項後段と前段との複合的対処の必要
Ⅸ 「段階思考」を超えて
 1 タテとヨコ
 2 本章の分類論の整理
 3 表現の自由の再定位―「状態」の保障として
 4 基本権の分類論の再定位
 5 タテの段階思考とヨコの論証思考―試論として
Ⅹ 結びに代えて

◆第14章 人権制約法理としての「浦部三原則」
Ⅰ 「浦部三原則」とその時代
 1 一元的内在制約説の具体化としての登場
 2 時代背景としての審査基準論vs.比較衡量論
 3 立法政策統制論にすぎない比較衡量論と学説の反発
 4 浦部三原則の比較衡量論的外観ゆえの潜行
Ⅱ 一元的内在制約説の再定位と「浦部三原則」
 1 浦部三原則の可能性
 2 一元的内在制約説の帰結としての「一つの人権保障」
 3 一元的内在制約説がもたらす逆説
 4 逆説への回答その1―生命,自由,幸福追求の序列化
 5 逆説への回答その2―法律の一般性と具体的適用の区別
 6 逆説への回答その3―唯一の人権としての「個人の尊厳」とその仮象たち
 7 浦部三原則の再定位―逆説への回答としての
Ⅲ 審査基準論と「浦部三原則」
 1 目的審査基準としての浦部三原則
 2 通説における目的審査
 3 通説における目的審査の軽視と浦部三原則
 4 浦部三原則の審査基準論としての特異性
 5 比較衡量論と審査基準論の近似性
Ⅳ 立法事実の挙証責任としての「浦部審査基準論」―付論
 1 もう一つの「浦部説」
 2 憲法訴訟の訴訟法的把握としての「浦部審査基準論」
 3 付随審査制に適合的な「浦部審査基準論」
 4 「浦部審査基準論」による二重の基準論の根拠づけ
Ⅴ むすびに代えて

◆第15章 人権制約法理としての公共の福祉論の現在―最高裁判決における近時の展開を踏まえて
Ⅰ はじめに
Ⅱ 日本国憲法における「公共の福祉」
 1 条文の構造
 2 人権制約法理としての「公共の福祉」の解釈論
 3 本章の課題
Ⅲ 猿払事件最高裁大法廷判決
 1 同事件の概要
 2 同判決の主な理由付け
 3 猿払判決のいわゆる「猿払基準」への批判
Ⅳ 「平成24年判決」の登場と審査基準論のゆらぎ
 1 平成24年判決のインパクト
 2 平成24年判決の判旨
 3 猿払判決と平成24年判決の相違点
 4 千葉裁判官補足意見
 5 千葉裁判官補足意見をめぐる学説の反応
Ⅴ おわりに―平成24年判決が公共の福祉論に与え得る影響

◆第16章 私人間の憲法訴訟
Ⅰ はじめに
 1 問題の所在
 2 憲法の最高法規性と司法審査権
 3 私人の行為と憲法規範
 4 裁判官の私法解釈権の広大さと憲法適合的解釈
 5 「私人間の憲法訴訟」の観念の可能性
Ⅱ 「私人間の憲法訴訟」の特徴その1―憲法訴訟としての民事訴訟
 1 憲法訴訟が民事訴訟では稀であること
 2 行政訴訟・刑事訴訟が憲法訴訟化しやすい理由
 3 民事訴訟が憲法訴訟化しにくい理由
 4 憲法訴訟化しやすい民事訴訟の条件
Ⅲ 「私人間の憲法訴訟」の特徴その2―私法に対する司法審査
 1 審査基準の意味
 2 私法に対する司法審査の独自性
 3 契約自由の原則・私的自治の原則
 4 私法関係における法源の多様性と判例の役割
 5 「条理適合性審査」としての司法審査
 6 私法の司法審査において裁判所の取るべき態度
 7 裁判所の保護義務の発現の場としての「私人間の憲法訴訟」
Ⅳ いくつかの裁判事例
 1 三菱樹脂事件
 2 日産自動車事件
 3 森林法事件
 4 非嫡出子相続分差別事件

◆第17章 違憲国賠訴訟とその周辺
Ⅰ 違憲国賠訴訟の意義と限界
Ⅱ 本章の目的―滝井補足意見の示唆を受けて
Ⅲ 違憲国賠訴訟の二類型―事実行為型と立法行為型
Ⅳ 事実行為型としての靖国公式参拝訴訟
Ⅴ 事実行為型としての自衛隊イラク派遣訴訟
Ⅵ 事実行為型の必要十分条件としての定型的な法益侵害性
Ⅶ 立法行為型としての違憲国賠訴訟
Ⅷ 立法行為型における判例の展開
Ⅸ その後の判例の展開
Ⅹ 再婚禁止期間判決における立法国賠の要件
XⅠ 再婚禁止期間判決における違憲国賠訴訟の原点回帰
XⅡ む す び

◆第18章 「憲法と私法」二題―営業の自由,私人間効力論再訪
Ⅰ はじめに
Ⅱ 営業の自由・再訪
 1 問題の所在
 2 「公序」としての営業の自由・再訪
 3 人格権としての営業の自由・再訪―薬事法判決
 4 現代社会における営業の自由
Ⅲ 私人間効力論・再訪―間接適用説の一論証
 1 問題の所在
 2 憲法22条1項(営業の自由)による授権
 3 憲法19条(思想の自由)による授権
 4 契約自由と思想の自由との「交錯」

◆第Ⅳ部 憲法の解釈 ―統治編―

◆第19章 「集団的自衛権」の風景―9条・前文・13条
Ⅰ はじめに―世にも奇妙な状況のなかで
 1 解釈変更のなされ方
 2 「芦田修正」
 3 「芦田修正」は個別的自衛権論よりは広がりうる
 4 個別的/集団的自衛権の政策論としての得失
 5 誰がどうやって決めるべきか
Ⅱ 9条解釈をめぐる戦後史を振り返る
 1 1954年政府見解に見られる芦田修正的思考
 2 自衛権論に固執した砂川判決)
 3 72年政府見解
 4 9条論に代わる13条論の導入
Ⅲ 72年政府見解における9条・前文・13条の力学
 1 直前の吉國長官答弁
 2 同見解における13条の役割―大転換の予感
 3 同見解における9条の負荷からの解放のきざし
Ⅳ 過去からの解放?―むすびに代えて
 1 閣議決定による72年見解の再発見
 2 法制局依存への疑問―なぜ「芦田修正」に戻らないのか?)

◆第20章 砂川判決における「司法審査と民主制」
Ⅰ 問題の所在
 1 砂川判決の「統治行為論」
 2 本章の目的
Ⅱ 砂川判決「統治行為論」の構造
 1 判示の整理
 2 判示の構造
Ⅲ 砂川判決「統治行為論」のほころび
 1 第一のほころび
 2 第二のほころび
 3 同判決の「統治行為論」の意味するところ
 4 司法の「権威」と「統治行為論」
Ⅳ 「立憲主義」の二つの顔
 1 立憲主義の二義性
 2 最高裁の憲法解釈が有する原理的問題
 3 司法審査権の矛盾の埋め合わせとしての「政治的拘束」?
 4 「法的拘束」が「政治的拘束」に勝る理由(その1)
 5 「法的拘束」が「政治的拘束」に勝る理由(その2)
 6 「憲法と政治の乖離」の解消としての憲法の切り下げ?
 7 中間的小括
Ⅴ ふたたび砂川判決「統治行為論」へ―「司法審査と民主制」の観点からの再構成の試み
 1 前節までの検討
 2 砂川判決の「統治行為論」の読み直しの試み
 3 プロセス理論と砂川判決の「統治行為論」
 4 拡大されたプロセス理論と砂川判決との架橋
 5 砂川判決のプロセス理論による正当化?
 6 9条の司法審査とプロセス理論
 7 プロセス理論の前提としての中身とプロセスの分離可能性
 8 司法審査による民主的政治過程の破壊?
Ⅵ 小 括
 1 小嶋博士への応答
 2 砂川判決の構成について
 3 集団的自衛権について

◆第21章 選挙無効訴訟と国会の裁量―衆議院の選挙区割りをめぐる最高裁平成25年11月20日大法廷判決を素材として
Ⅰ はじめに
Ⅱ 平成25年判決に至る経緯
Ⅲ 平成23年判決
 1 小選挙区制下での選挙区割りのルール
 2 平成23年判決の特徴
Ⅳ 平成25年判決
 1 平成25年判決の概要
 2 平成25年判決の特徴
Ⅴ 結びにかえて

◆第22章 参議院議員定数配分をめぐる近時の最高裁判例―最高裁平成26年11月26日大法廷判決を中心として
Ⅰ はじめに
Ⅱ 平成26年判決に至る判例の流れ
 1 平成26年判決によるそれまでの判例の整理
 2 出発点としての昭和58年判決
 3 平成16年判決における転機
 4 平成18年判決,平成21年判決
 5 平成24年判決
Ⅲ 平成26年判決
 1 平成26年判決の事案
 2 平成26年判決の概要
 3 平成26年判決の意味するところ
Ⅳ おわりに

◆第23章 二院制の意義ならびに参議院の独自性―国会の憲法上の位置付けから見た論点整理
Ⅰ はじめに
Ⅱ 本章の視点
 1 二院制の意義ならびに参議院の独自性の論じ方
 2 最高裁判所平成26年11月26日大法廷判決における二院制のとらえ方
 3 二院制を論じる際の前提
Ⅲ 日本国憲法における国会の位置付け
 1 国会の位置付けおよび二院制に関する憲法上の根拠条文
 2 国権の最高機関
 3 国民代表機関
 4 国会と内閣の関係における国会の位置付け
Ⅳ 二院制の意義
 1 国会の位置付けの諸論点
 2 国会の憲法上の位置付けから帰結し得る二院制の意義
Ⅴ 参議院の独自性
 1 「政治的代表」としての参議院
 2 「熟議の府」としての参議院と議院内閣制
 3 「法律の誠実な執行」をめぐる行政監視の府としての参議院
Ⅵ おわりに

◆第24章 現代の行政権―Short, Tall, Grande, or Venti?
Ⅰ 「行政国家」のいま,を生きる
 1 身近な「行政」を探して
 2 もし「行政」が存在しなければ
 3 法治行政の原則
 4 「行政国家」に生まれて
Ⅱ 行政=国家の守備範囲はどこまでか
 1 小さな政府と大きな自由
 2 そもそも(行政)国家の権限はどこまでのものか?
 3 そもそも国家の領域=行政の領域とは?
Ⅲ 行政が独走するとき
 1 行政=国家を取り巻く現状
 2 行政が国家を超える?
Ⅳ 「議会留保」という発想
 1 議会留保の意義
 2 ドイツで議会留保が認められている事項
 3 議会留保という考え方の背景
 4 議会と行政の新しい関係?

   

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