行政法再入門(上) 【第2版】
「合理的な公益の形成とその実効的実現手法とは」等、行政法のパラダイム転換へ。行政行為論などを廃し、行政手法論を活用し、人間の心理や行政・裁判の組織的腐敗を踏まえた行政法の本質的理解のために必読の書、好評の第2版。
『行政法再入門(上) 第2版』
阿部泰隆(弁護士・神戸大学名誉教授) 著
【目 次】
第二版はしがき
はしがき
◆第一部 行政法(学)の未来◆
◆序 章 行政法学の位置づけと行政法の役割
第一節 はじめに本書で頻繁に取り上げる判例と特殊用語の解説
一 取り上げる主要判例
二 言葉の解説
第二節 行政法の復権
一 基幹三法群の一角を占める法であること
二 法治国家、法の段階的構造とその審査
三 上位法適合性の吟味
四 行政・行政法の定義
五 実質的意義の行政法群
六 空気のような(一般の人は必要を感じない)行政法、司法試験からの追放
七 行政法の復権・法治国家へ第一歩
第三節 行政活動の拡大とその存在理由
一 現代国家における行政法の役割
二 紛争・被害の予防・簡易な解決作用―民刑事法の機能不全
1 人間性悪説
2 明確な基準による予防行政(行政法の先手必勝的性格)
3 民事法にはない新しい行政手法
4 軽微・累積的被害の行政による除去・防止
三 社会の無秩序な発展の制御・よりよい社会への誘導(外部不経済の是正)
四 生活必需サービス等の直接供給と供給確保
五 資源の再配分・弱者の保護
六 その他の管理業務
第四節 公共性をカバーする行政法のシステム―権利防御型モデルから複効的行政活動の三面的利害調整型モデルへ
一 二面関係から三面関係へ
1 二面関係
2 三面関係、私益の集合としての公益を実現する行政法の特質
二 二面関係と三面関係からみた行政処分の分類と救済手段の関連
1 申請に対する処分
2 自己への不利益処分
3 第三者への許可等授益処分
4 第三者への不利益処分の不作為
5 行政手続法二〇一四年改正、違法な行政指導の中止請求、第三者への処分・行政指導請求
第五節 行政の法システムの有用性の充実と活用
一 行政法の優れている面
二 私法への逃避を防止せよ
第六節 行政法学とは?
一 すべての専門家はいない
二 共通の法システムの解明、行政行為論との決別
1 従来の行政法学=行為形式と訴訟類型の重視
2 行政行為論・行為形式論の無内容
3 法システム論
三 行政法の(あるべき)基本原理
1 法律による行政の原理(実質的法治国家)
2 社会福祉の原理
3 国家の統治構造に関する憲法上の制約
4 公共性の原理
5 地方自治の尊重
6 個人情報の保護、行政の情報公開、説明責任、立証責任
四 行政法学の内容分類
1 行政法の分類
2 行政作用法(対私人行政権限・発動根拠法)
3 行政組織法(行政内部法)
4 行政救済法(違法行政是正・私人救済法)
第七節 解釈学のあり方
一 制定法準拠主義から憲法を踏まえた法体系の合理的解釈へ
1 役所の解釈は当てにならないこと
2 制定法準拠主義の誤りとその放棄の必要性
3 従来の行政法学の対応
4 憲法と法体系の合理的解釈
5 法治主義と民主主義の観点から
6 立法者意思の使い方
7 行政訴訟の解釈における立法者意思
8 合憲限定解釈への疑問
二 実 例
1 「公の秩序をみだすおそれのある場合」という漠然とした規定の合理的解釈
2 法律の適用順序、一般法と特別法
3 給与条例主義の潜脱(脱法行為)、給与と福祉の間
4 ごまかしの立法目的
第八節 政策法学
◆第一章 行政法の抜本的改革―行政と私人の対等な法関係の創出、行政法学の神話性の克服
第一節 行政と私人の対等性の原則の確立―行政の優越性(正体は、行政機関の先攻、私人の防御戦争)の克服、
役人性善説からの脱却、違法行為をする公務員の責任追及と私人の実効的救済
一 行政優位の権力関係
1 行政機関の優越的な先攻、私人の不利な防御戦争
2 違法行政をしても役所は損しない、私人は犠牲
3 組織の腐敗
4 認識不足のこれまでの判例学説
5 これからの解決策
二 実体法の不公平
三 対等な法制度を創れ
1 訴訟でも対等に、救済制度の充実
2 訴訟類型の判定困難対策、違法是正訴訟の提案
3 手の汚れた公務員のした処分は違法とせよ、役人性善説からの脱却
4 違法行為をした公務員、役所が損するシステムに
5 公益訴訟勝訴報奨金・内部告発者奨励金の提唱
第二節 行政法学の神学性の打破
一 行政の第一次的判断権の神話と義務付け訴訟
二 原告適格の拒否的濫用(濫却下の弊)
三 公定力理論は永久追放せよ
四 権力留保論の誤謬
五 出訴期間と法的安定性の嘘
六 行政裁量・行政の専門性の勘違い
七 執行不停止原則の根拠なし
◆第二部 行政の法システム◆
◆第二章 実質的法治主義(法律による行政の原理)からみた行政法規の解釈
第一節 法律の根拠と法律の明確性の原則
一 行政法は実質的法治主義で貫徹
二 法律と行政の関係、特に法律の根拠(法律の留保)
1 法律の性格分類根拠規範、組織規範、規制規範の比較
2 侵害留保説の歴史的説明
3 侵害留保説の今日的説明
4 全部留保説の限界
5 権力留保説は法律の根拠論ではないこと
6 重要事項留保説の妥当性
三 根拠規範の明確かつ具体性の要請、合憲限定解釈の行き過ぎ
1 明確な規定の必要性
2 不明確な規定は、合憲限定解釈ではなく、違憲・無効とすべきであること
四 法治主義から見た具体例の検討
第二節 法治行政と信頼保護の原則
一 租税法の例
二 社会保障法の例
第三節 経過措置・遡及立法
一 不利益処分遡及禁止の原則
二 判決による場合
三 新規の規制の導入と経過措置の要否
第四節 行政指導の濫用対策
一 建前は任意手段である行政指導
二 根拠規範不要、行政手続法は規制規範
三 法律の根拠のある行政指導、指導前置主義
四 行政指導強制禁止の原則
五 行政指導に対する救済
六 違法な行政指導例
◆第三章 行政手法
第一節 行政手法論の意義
一 新しい行政手法
二 国家は撤退したか→手法の変化
三 法システムと法的手法を解明する視点
第二節 各種の行政手法
一 監督・規制手法
1 監督・規制手法の諸相
2 社会的規制と経済規制
3 認 可
4 行政規制における審査事項
5 関連営業の規制
二 経済的手法
三 土地利用規制手法及びリスクマネジメント
四 事業手法
五 情報提供・啓発手法
六 補助手法・給付手法
七 住民参加手法
八 協働手法
九 私人による公益目的実現手法
一〇 そ の 他
1 行政指導手法
2 情報の収集・管理・公開
3 行政強制手法
4 刑事罰手法
◆第四章 地方自治法・行政組織法
第一節 地方自治(地域自治)
一 これまでの地方自治制度
1 地方自治強化の必要性
2 これまでの国の事務と自治事務の関係
3 (廃止された)機関委任事務
二 二〇〇〇年地方分権(第一次)改革
1 抜本的な地方分権の根拠
2 国と地方の役割分担の原則
3 機関委任事務の廃止・事務の再構成と条例制定権の拡大
4 国家関与の法治国家化―国と地方の関係が上下関係から法の下に対等の法治国家へ
5 権限委譲
6 平成の市町村合併
三 それ以後の改革
1 未完の分権改革
2 三位一体の改革、財源の保障の不備
3 義務付け・枠付けの見直し
4 法システムの根幹を貫く発想の発見と改革、更なる分権と自治の充実のために
第二節 行政組織のシステム
一 行政主体、行政庁と補助機関等
1 行政の統一性
2 行政主体
3 行 政 庁
4 行政機関
5 補助機関
6 附属機関
二 行政機関相互の関係
1 上下の監督関係
2 対等な行政機関相互の調整
三 権限の委任、代理、専決・代決
1 権限の委任
2 代 理
3 専決・代決
四 民営化と公権力の委任
1 公権力民間委任禁止の発想
2 民間化の実態、権力を委任せず
3 指定確認検査機関の例、権力を委任するも、裁量権は委任せず
4 裁量的公権力の民間委託適法化は可能
◆第五章 行政法と民事法
第一節 はじめに
第二節 法の一般原則
第三節 行政行為と民事法の関係、特に行政処分と所有名義人、真の所有者
一 【事例1】農地買収処分は登記名義人を相手方とすれば適法か―民法一七七条の関係
二 【事例2】滞納処分は登記名義人を相手にすれば適法か?
三 【事例3】国が買収したが未登記の間に当該農地が第三者に転売された場合
四 固定資産税は登記名義人に課される
五 道路法四条
第四節 民法と行政法の適用関係
一 民法二三四条と建築基準法六五条の関係
二 公営住宅と民事法の適用関係、公営住宅の明渡しと信義則
三 消滅時効
1 納入の通知・督促と時効中断の効力
2 消滅時効期間
3 時効の援用と利益の放棄
四 公物の時効取得
五 相 殺
第五節 行政規制の遵守と私法上の責任の関係
一 行政規制の遵守と不法行為
二 実例の紹介
◆第六章 行政法規の構造とその実現過程
第一節 法律の具体化と読み方
一 法規範の段階的構造の確保
二 法律の用語に注意
1 法令用語明確性の要請
2 「及び、並びに、若しくは、又は」
3 その他「の」、地方自治法施行令一六七条の二に定める随意契約により売却できる場合の誤読例等
4 「ものとする」
5 「知った日から」―審査請求期間、出訴期間の起算日
6 「おそれがあるもの」、「おそれがあると行政機関の長が認めることにつき相当の理由がある情報」
7 副作用発生のおそれ、証拠隠滅のおそれ
8 「前三条の規定によるのほか」、国家賠償法四条
9 道路と道、申請と申出
10 刑に処せられた、裁判所が定めた、の意味
第二節 行政立法
一 行政立法とは
二 法規命令
1 法規命令の性格と種類
2 委任立法の限界
3 授権する法律の違憲性、白紙委任の禁止
4 委任の趣旨の合理的解釈
三 行政規則
1 行政規則の例
2 行政規則の外部効果
3 通達の法的拘束力、違法な通達に対する争訟方法
4 通達による法解釈の変更―通達課税
第三節 条例制定権の範囲と限界
一 問題の所在
二 地方公共団体の事務の範囲
1 地域的不平等
2 国の事務
3 財 産 権
4 私法秩序
三 法律と条例の関係
1 法律専占論
2 横出し・スソ切り
3 上乗せの許否?
4 最高裁判例の基準
5 個別条例の検討
6 上書権・国法への溶け込み
第四節 いわゆる行政裁量の司法審査、事案にふさわしい合理的な判断をする義務
一 包摂の過程の合理性を司法審査
二 古色蒼然とした、克服されるべき従来の発想
1 従前の学説、自由裁量は法治行政の例外
2 判断過程を示さず、あるいは行政丸投げの判例
三 古典的な理論でも違法となる例
四 考慮事項を適切に考慮する、踏み込んだ判例
1 個人タクシー事件―聴聞における審査基準の設定義務
2 もんじゅ訴訟、専門委員会の判断と司法審査の方法
3 身体障がい者であることを理由とする高校不合格の裁量濫用
4 エホバの証人事件
5 土地収用・事業認定、都市計画における考慮事項の欠落
6 公共施設・公物の使用許可
7 公務員の処分における比例原則、日の丸・君が代懲戒処分事件
五 今日の裁量統制のあり方
1 裁量は、法治国家の例外ではなく、立法者の信託の誠実な実現を
2 行政の主張・立証責任と具体的な司法審査方法
3 行政事件訴訟法三〇条は廃止せよ、代替案の提案
六 附款の限界と行政裁量
1 附款とは
2 附款とは法治行政の一コマ
3 裁量性のある行為における附款の限界
4 期限も短期のものは無効
5 違法な附款に対する救済方法
◆第七章 行政行為と契約
第一節 行政行為
一 許認可における見合い規定
二 私権の有無の無審査の原則
三 行政処分の申請者、同意者の地位
1 同意に基づく処分
2 公務員の退職願の撤回と信義則
3 任期制公務員の「同意」
4 確定申告における錯誤
四 行政処分の相手方
1 対人処分と対物処分
2 立法の不統一と立法政策
3 命令の相手方の選択
4 土地収用の相手方
5 所有者名不明の対策
6 土壌汚染対策法の汚染土壌除去責任
7 処分による義務の連帯責任?
五 処分の判断基準時は申請時、審査基準の改定、経過措置との関係
1 許認可申請後の審査基準の変更は事後立法禁止原則違反
2 先願主義の判例との関係
3 法令の変更による不許可の適法化、経過措置、損失補償請求
六 行政行為の無効と取消し、職権取消し・撤回、一事不再理
1 無効と取消しの区別の意味
2 撤 回
3 職権取消し・撤回の限界
4 訴訟との関係
5 一事不再理?不可変更力?
七 行政処分と被処分者の故意過失
1 行政処分発動に被処分者の故意過失は必要か
2 制裁的行政処分においては被処分者の過失が必要
八 その他、行政行為の項目でこれまで説明された事柄
第二節 行政契約
一 契約と法規範
二 行政手法と民事手法の比較
1 行政行為と契約の立法的選択
2 契約の締結強制
三 公契約法の特殊性
四 財産管理
◆第八章 情報の法システム
第一節 情報収集手法(特に行政調査手法)
一 種々の情報収集手法
二 行政処分の前哨戦
三 種々の行政調査手法
1 即時強制=強制立入りによる調査
2 刑罰により間接的に担保された行政調査
3 行政制裁により担保された行政調査
4 任意の立入り
5 情報収集の義務づけ、さらに、第三者評価手法
四 制度上の問題点
1 刑事罰の機能不全対策
2 区別の困難
3 調査権限の不備
4 疑惑があるが、立ち入れず、立ち入らなければ立入検査の対象になるかどうかが判明しないという不合理の解決
五 解釈上の問題点
1 事前通告・理由開示の要否・第三者の立会い
2 収 去
3 犯罪捜査との関係
4 行政調査と企業秘密・プライバシー
5 行政調査の違法と処分の効力
第二節 個人情報保護法制
一 個人情報保護の原則
二 行政機関個人情報保護法
1 法律の成立
2 定 義
3 規 制
三 個人情報保護法
1 義務規定
2 国家介入の抑制
3 具体的事例の検討
第三節 情報の公開
一 情報公開の総合体系
二 情報公開制度化の流れ
三 情報公開制度のシステム
1 何人にも裁判で貫徹できる実体法上の請求権
2 知る権利と国民主権
3 対象文書と行政機関(実施機関)
4 文書不存在への対応
四 非開示事由
1 情報公開制度のもとでの個人情報保護
2 二号 法人情報、個人事業情報
3 三号 国の安全、外国や国際機関との信頼関係条項
4 四号 犯罪捜査等情報
5 五号 内部検討情報
6 六号 事務事業情報(監督等情報、契約・交渉情報、調査研究情報、人事管理情報、企業経営上の正当な利益情報)
五 そ の 他
1 部分公開(六条)
2 グローマー条項(八条)
3 大量請求・権利濫用
4 手 数 料
5 第三者の意見聴取手続
6 情報公開審査会
7 インカメラ手続
8 文書管理
第四節 その他の情報公開関連制度
一 情報提供(広報)と説明義務
二 情報非公開の日本型立法過程と特定情報一般公開義務づけ制度、法律案の理由書の作成・公開の義務付けの提案
三 会議公開
1 議 会
2 行政の会議
四 倫理条例と資産公開法、神戸市口利き記録条例
1 公人の資産公開
2 国家公務員倫理法
3 政治家の口利き禁止制度を
五 特定秘密保護法
◆第九章 行政強制・制裁
第一節 行政強制
一 その歴史的発展と現状
1 英米流と大陸流
2 その長短
3 戦後の法改正
4 現行法における行政上の義務の履行確保方法の位置
二 金銭債権の執行方法―行政上の強制徴収と民事徴収
1 法システム
2 行政上の強制徴収の許否
3 立法政策的当否
三 行政代執行
1 行政行為の(自力)執行力
2 代執行の法システム
3 代執行類似の制度=略式代執行、直接施行
四 直接強制と即時強制
1 直接強制
2 即時強制―個別処分による義務賦課を前提としない物理的実力行使
五 執行罰(金銭的間接強制、強制金)
六 民事執行
1 私法的強制手法
2 行政上の義務の民事執行
七 制裁的公表
1 公表に二種類
2 制裁的公表の導入
3 制裁的公表制度が導入される理由
4 運用状況
5 法律の根拠
6 違法な公表
7 情報公開制度の影響
第二節 制裁・刑事罰
一 刑事罰への依存体質
二 行政刑罰の特色
1 強制手段ではないこと
2 罪刑法定主義
3 過失犯処罰規定の要否
4 過失犯=故意犯とする立法
5 両罰規定
6 罰金・科料
三 行政上の秩序罰としての過料
四 行政処分の効力と処罰(公定力は刑事訴訟へ及ぶか)
1 問題の所在
2 判例:非反則者のスピード違反事件
五 直罰とワンクッション・システム
1 語 義
2 ワンクッションから直罰へ
3 処罰の軽重
第三節 新しい強制・制裁手法
一 経済的利得の没取、独禁法の課徴金
1 独禁法の課徴金のシステム
2 刑罰と課徴金の併科と二重処罰
3 課徴金と法人処罰の関係
4 課徴金と不当利得の関係
二 犯罪収益奪手法
三 放置違反金―駐車違反の責任は違反した運転手から「使用者」へ
四 民事法を補完する新しい手法
〔下巻へ続く〕
事項索引(巻末)
判例索引(巻末)
阿部泰隆(弁護士・神戸大学名誉教授) 著
【目 次】
第二版はしがき
はしがき
◆第一部 行政法(学)の未来◆
◆序 章 行政法学の位置づけと行政法の役割
第一節 はじめに本書で頻繁に取り上げる判例と特殊用語の解説
一 取り上げる主要判例
二 言葉の解説
第二節 行政法の復権
一 基幹三法群の一角を占める法であること
二 法治国家、法の段階的構造とその審査
三 上位法適合性の吟味
四 行政・行政法の定義
五 実質的意義の行政法群
六 空気のような(一般の人は必要を感じない)行政法、司法試験からの追放
七 行政法の復権・法治国家へ第一歩
第三節 行政活動の拡大とその存在理由
一 現代国家における行政法の役割
二 紛争・被害の予防・簡易な解決作用―民刑事法の機能不全
1 人間性悪説
2 明確な基準による予防行政(行政法の先手必勝的性格)
3 民事法にはない新しい行政手法
4 軽微・累積的被害の行政による除去・防止
三 社会の無秩序な発展の制御・よりよい社会への誘導(外部不経済の是正)
四 生活必需サービス等の直接供給と供給確保
五 資源の再配分・弱者の保護
六 その他の管理業務
第四節 公共性をカバーする行政法のシステム―権利防御型モデルから複効的行政活動の三面的利害調整型モデルへ
一 二面関係から三面関係へ
1 二面関係
2 三面関係、私益の集合としての公益を実現する行政法の特質
二 二面関係と三面関係からみた行政処分の分類と救済手段の関連
1 申請に対する処分
2 自己への不利益処分
3 第三者への許可等授益処分
4 第三者への不利益処分の不作為
5 行政手続法二〇一四年改正、違法な行政指導の中止請求、第三者への処分・行政指導請求
第五節 行政の法システムの有用性の充実と活用
一 行政法の優れている面
二 私法への逃避を防止せよ
第六節 行政法学とは?
一 すべての専門家はいない
二 共通の法システムの解明、行政行為論との決別
1 従来の行政法学=行為形式と訴訟類型の重視
2 行政行為論・行為形式論の無内容
3 法システム論
三 行政法の(あるべき)基本原理
1 法律による行政の原理(実質的法治国家)
2 社会福祉の原理
3 国家の統治構造に関する憲法上の制約
4 公共性の原理
5 地方自治の尊重
6 個人情報の保護、行政の情報公開、説明責任、立証責任
四 行政法学の内容分類
1 行政法の分類
2 行政作用法(対私人行政権限・発動根拠法)
3 行政組織法(行政内部法)
4 行政救済法(違法行政是正・私人救済法)
第七節 解釈学のあり方
一 制定法準拠主義から憲法を踏まえた法体系の合理的解釈へ
1 役所の解釈は当てにならないこと
2 制定法準拠主義の誤りとその放棄の必要性
3 従来の行政法学の対応
4 憲法と法体系の合理的解釈
5 法治主義と民主主義の観点から
6 立法者意思の使い方
7 行政訴訟の解釈における立法者意思
8 合憲限定解釈への疑問
二 実 例
1 「公の秩序をみだすおそれのある場合」という漠然とした規定の合理的解釈
2 法律の適用順序、一般法と特別法
3 給与条例主義の潜脱(脱法行為)、給与と福祉の間
4 ごまかしの立法目的
第八節 政策法学
◆第一章 行政法の抜本的改革―行政と私人の対等な法関係の創出、行政法学の神話性の克服
第一節 行政と私人の対等性の原則の確立―行政の優越性(正体は、行政機関の先攻、私人の防御戦争)の克服、
役人性善説からの脱却、違法行為をする公務員の責任追及と私人の実効的救済
一 行政優位の権力関係
1 行政機関の優越的な先攻、私人の不利な防御戦争
2 違法行政をしても役所は損しない、私人は犠牲
3 組織の腐敗
4 認識不足のこれまでの判例学説
5 これからの解決策
二 実体法の不公平
三 対等な法制度を創れ
1 訴訟でも対等に、救済制度の充実
2 訴訟類型の判定困難対策、違法是正訴訟の提案
3 手の汚れた公務員のした処分は違法とせよ、役人性善説からの脱却
4 違法行為をした公務員、役所が損するシステムに
5 公益訴訟勝訴報奨金・内部告発者奨励金の提唱
第二節 行政法学の神学性の打破
一 行政の第一次的判断権の神話と義務付け訴訟
二 原告適格の拒否的濫用(濫却下の弊)
三 公定力理論は永久追放せよ
四 権力留保論の誤謬
五 出訴期間と法的安定性の嘘
六 行政裁量・行政の専門性の勘違い
七 執行不停止原則の根拠なし
◆第二部 行政の法システム◆
◆第二章 実質的法治主義(法律による行政の原理)からみた行政法規の解釈
第一節 法律の根拠と法律の明確性の原則
一 行政法は実質的法治主義で貫徹
二 法律と行政の関係、特に法律の根拠(法律の留保)
1 法律の性格分類根拠規範、組織規範、規制規範の比較
2 侵害留保説の歴史的説明
3 侵害留保説の今日的説明
4 全部留保説の限界
5 権力留保説は法律の根拠論ではないこと
6 重要事項留保説の妥当性
三 根拠規範の明確かつ具体性の要請、合憲限定解釈の行き過ぎ
1 明確な規定の必要性
2 不明確な規定は、合憲限定解釈ではなく、違憲・無効とすべきであること
四 法治主義から見た具体例の検討
第二節 法治行政と信頼保護の原則
一 租税法の例
二 社会保障法の例
第三節 経過措置・遡及立法
一 不利益処分遡及禁止の原則
二 判決による場合
三 新規の規制の導入と経過措置の要否
第四節 行政指導の濫用対策
一 建前は任意手段である行政指導
二 根拠規範不要、行政手続法は規制規範
三 法律の根拠のある行政指導、指導前置主義
四 行政指導強制禁止の原則
五 行政指導に対する救済
六 違法な行政指導例
◆第三章 行政手法
第一節 行政手法論の意義
一 新しい行政手法
二 国家は撤退したか→手法の変化
三 法システムと法的手法を解明する視点
第二節 各種の行政手法
一 監督・規制手法
1 監督・規制手法の諸相
2 社会的規制と経済規制
3 認 可
4 行政規制における審査事項
5 関連営業の規制
二 経済的手法
三 土地利用規制手法及びリスクマネジメント
四 事業手法
五 情報提供・啓発手法
六 補助手法・給付手法
七 住民参加手法
八 協働手法
九 私人による公益目的実現手法
一〇 そ の 他
1 行政指導手法
2 情報の収集・管理・公開
3 行政強制手法
4 刑事罰手法
◆第四章 地方自治法・行政組織法
第一節 地方自治(地域自治)
一 これまでの地方自治制度
1 地方自治強化の必要性
2 これまでの国の事務と自治事務の関係
3 (廃止された)機関委任事務
二 二〇〇〇年地方分権(第一次)改革
1 抜本的な地方分権の根拠
2 国と地方の役割分担の原則
3 機関委任事務の廃止・事務の再構成と条例制定権の拡大
4 国家関与の法治国家化―国と地方の関係が上下関係から法の下に対等の法治国家へ
5 権限委譲
6 平成の市町村合併
三 それ以後の改革
1 未完の分権改革
2 三位一体の改革、財源の保障の不備
3 義務付け・枠付けの見直し
4 法システムの根幹を貫く発想の発見と改革、更なる分権と自治の充実のために
第二節 行政組織のシステム
一 行政主体、行政庁と補助機関等
1 行政の統一性
2 行政主体
3 行 政 庁
4 行政機関
5 補助機関
6 附属機関
二 行政機関相互の関係
1 上下の監督関係
2 対等な行政機関相互の調整
三 権限の委任、代理、専決・代決
1 権限の委任
2 代 理
3 専決・代決
四 民営化と公権力の委任
1 公権力民間委任禁止の発想
2 民間化の実態、権力を委任せず
3 指定確認検査機関の例、権力を委任するも、裁量権は委任せず
4 裁量的公権力の民間委託適法化は可能
◆第五章 行政法と民事法
第一節 はじめに
第二節 法の一般原則
第三節 行政行為と民事法の関係、特に行政処分と所有名義人、真の所有者
一 【事例1】農地買収処分は登記名義人を相手方とすれば適法か―民法一七七条の関係
二 【事例2】滞納処分は登記名義人を相手にすれば適法か?
三 【事例3】国が買収したが未登記の間に当該農地が第三者に転売された場合
四 固定資産税は登記名義人に課される
五 道路法四条
第四節 民法と行政法の適用関係
一 民法二三四条と建築基準法六五条の関係
二 公営住宅と民事法の適用関係、公営住宅の明渡しと信義則
三 消滅時効
1 納入の通知・督促と時効中断の効力
2 消滅時効期間
3 時効の援用と利益の放棄
四 公物の時効取得
五 相 殺
第五節 行政規制の遵守と私法上の責任の関係
一 行政規制の遵守と不法行為
二 実例の紹介
◆第六章 行政法規の構造とその実現過程
第一節 法律の具体化と読み方
一 法規範の段階的構造の確保
二 法律の用語に注意
1 法令用語明確性の要請
2 「及び、並びに、若しくは、又は」
3 その他「の」、地方自治法施行令一六七条の二に定める随意契約により売却できる場合の誤読例等
4 「ものとする」
5 「知った日から」―審査請求期間、出訴期間の起算日
6 「おそれがあるもの」、「おそれがあると行政機関の長が認めることにつき相当の理由がある情報」
7 副作用発生のおそれ、証拠隠滅のおそれ
8 「前三条の規定によるのほか」、国家賠償法四条
9 道路と道、申請と申出
10 刑に処せられた、裁判所が定めた、の意味
第二節 行政立法
一 行政立法とは
二 法規命令
1 法規命令の性格と種類
2 委任立法の限界
3 授権する法律の違憲性、白紙委任の禁止
4 委任の趣旨の合理的解釈
三 行政規則
1 行政規則の例
2 行政規則の外部効果
3 通達の法的拘束力、違法な通達に対する争訟方法
4 通達による法解釈の変更―通達課税
第三節 条例制定権の範囲と限界
一 問題の所在
二 地方公共団体の事務の範囲
1 地域的不平等
2 国の事務
3 財 産 権
4 私法秩序
三 法律と条例の関係
1 法律専占論
2 横出し・スソ切り
3 上乗せの許否?
4 最高裁判例の基準
5 個別条例の検討
6 上書権・国法への溶け込み
第四節 いわゆる行政裁量の司法審査、事案にふさわしい合理的な判断をする義務
一 包摂の過程の合理性を司法審査
二 古色蒼然とした、克服されるべき従来の発想
1 従前の学説、自由裁量は法治行政の例外
2 判断過程を示さず、あるいは行政丸投げの判例
三 古典的な理論でも違法となる例
四 考慮事項を適切に考慮する、踏み込んだ判例
1 個人タクシー事件―聴聞における審査基準の設定義務
2 もんじゅ訴訟、専門委員会の判断と司法審査の方法
3 身体障がい者であることを理由とする高校不合格の裁量濫用
4 エホバの証人事件
5 土地収用・事業認定、都市計画における考慮事項の欠落
6 公共施設・公物の使用許可
7 公務員の処分における比例原則、日の丸・君が代懲戒処分事件
五 今日の裁量統制のあり方
1 裁量は、法治国家の例外ではなく、立法者の信託の誠実な実現を
2 行政の主張・立証責任と具体的な司法審査方法
3 行政事件訴訟法三〇条は廃止せよ、代替案の提案
六 附款の限界と行政裁量
1 附款とは
2 附款とは法治行政の一コマ
3 裁量性のある行為における附款の限界
4 期限も短期のものは無効
5 違法な附款に対する救済方法
◆第七章 行政行為と契約
第一節 行政行為
一 許認可における見合い規定
二 私権の有無の無審査の原則
三 行政処分の申請者、同意者の地位
1 同意に基づく処分
2 公務員の退職願の撤回と信義則
3 任期制公務員の「同意」
4 確定申告における錯誤
四 行政処分の相手方
1 対人処分と対物処分
2 立法の不統一と立法政策
3 命令の相手方の選択
4 土地収用の相手方
5 所有者名不明の対策
6 土壌汚染対策法の汚染土壌除去責任
7 処分による義務の連帯責任?
五 処分の判断基準時は申請時、審査基準の改定、経過措置との関係
1 許認可申請後の審査基準の変更は事後立法禁止原則違反
2 先願主義の判例との関係
3 法令の変更による不許可の適法化、経過措置、損失補償請求
六 行政行為の無効と取消し、職権取消し・撤回、一事不再理
1 無効と取消しの区別の意味
2 撤 回
3 職権取消し・撤回の限界
4 訴訟との関係
5 一事不再理?不可変更力?
七 行政処分と被処分者の故意過失
1 行政処分発動に被処分者の故意過失は必要か
2 制裁的行政処分においては被処分者の過失が必要
八 その他、行政行為の項目でこれまで説明された事柄
第二節 行政契約
一 契約と法規範
二 行政手法と民事手法の比較
1 行政行為と契約の立法的選択
2 契約の締結強制
三 公契約法の特殊性
四 財産管理
◆第八章 情報の法システム
第一節 情報収集手法(特に行政調査手法)
一 種々の情報収集手法
二 行政処分の前哨戦
三 種々の行政調査手法
1 即時強制=強制立入りによる調査
2 刑罰により間接的に担保された行政調査
3 行政制裁により担保された行政調査
4 任意の立入り
5 情報収集の義務づけ、さらに、第三者評価手法
四 制度上の問題点
1 刑事罰の機能不全対策
2 区別の困難
3 調査権限の不備
4 疑惑があるが、立ち入れず、立ち入らなければ立入検査の対象になるかどうかが判明しないという不合理の解決
五 解釈上の問題点
1 事前通告・理由開示の要否・第三者の立会い
2 収 去
3 犯罪捜査との関係
4 行政調査と企業秘密・プライバシー
5 行政調査の違法と処分の効力
第二節 個人情報保護法制
一 個人情報保護の原則
二 行政機関個人情報保護法
1 法律の成立
2 定 義
3 規 制
三 個人情報保護法
1 義務規定
2 国家介入の抑制
3 具体的事例の検討
第三節 情報の公開
一 情報公開の総合体系
二 情報公開制度化の流れ
三 情報公開制度のシステム
1 何人にも裁判で貫徹できる実体法上の請求権
2 知る権利と国民主権
3 対象文書と行政機関(実施機関)
4 文書不存在への対応
四 非開示事由
1 情報公開制度のもとでの個人情報保護
2 二号 法人情報、個人事業情報
3 三号 国の安全、外国や国際機関との信頼関係条項
4 四号 犯罪捜査等情報
5 五号 内部検討情報
6 六号 事務事業情報(監督等情報、契約・交渉情報、調査研究情報、人事管理情報、企業経営上の正当な利益情報)
五 そ の 他
1 部分公開(六条)
2 グローマー条項(八条)
3 大量請求・権利濫用
4 手 数 料
5 第三者の意見聴取手続
6 情報公開審査会
7 インカメラ手続
8 文書管理
第四節 その他の情報公開関連制度
一 情報提供(広報)と説明義務
二 情報非公開の日本型立法過程と特定情報一般公開義務づけ制度、法律案の理由書の作成・公開の義務付けの提案
三 会議公開
1 議 会
2 行政の会議
四 倫理条例と資産公開法、神戸市口利き記録条例
1 公人の資産公開
2 国家公務員倫理法
3 政治家の口利き禁止制度を
五 特定秘密保護法
◆第九章 行政強制・制裁
第一節 行政強制
一 その歴史的発展と現状
1 英米流と大陸流
2 その長短
3 戦後の法改正
4 現行法における行政上の義務の履行確保方法の位置
二 金銭債権の執行方法―行政上の強制徴収と民事徴収
1 法システム
2 行政上の強制徴収の許否
3 立法政策的当否
三 行政代執行
1 行政行為の(自力)執行力
2 代執行の法システム
3 代執行類似の制度=略式代執行、直接施行
四 直接強制と即時強制
1 直接強制
2 即時強制―個別処分による義務賦課を前提としない物理的実力行使
五 執行罰(金銭的間接強制、強制金)
六 民事執行
1 私法的強制手法
2 行政上の義務の民事執行
七 制裁的公表
1 公表に二種類
2 制裁的公表の導入
3 制裁的公表制度が導入される理由
4 運用状況
5 法律の根拠
6 違法な公表
7 情報公開制度の影響
第二節 制裁・刑事罰
一 刑事罰への依存体質
二 行政刑罰の特色
1 強制手段ではないこと
2 罪刑法定主義
3 過失犯処罰規定の要否
4 過失犯=故意犯とする立法
5 両罰規定
6 罰金・科料
三 行政上の秩序罰としての過料
四 行政処分の効力と処罰(公定力は刑事訴訟へ及ぶか)
1 問題の所在
2 判例:非反則者のスピード違反事件
五 直罰とワンクッション・システム
1 語 義
2 ワンクッションから直罰へ
3 処罰の軽重
第三節 新しい強制・制裁手法
一 経済的利得の没取、独禁法の課徴金
1 独禁法の課徴金のシステム
2 刑罰と課徴金の併科と二重処罰
3 課徴金と法人処罰の関係
4 課徴金と不当利得の関係
二 犯罪収益奪手法
三 放置違反金―駐車違反の責任は違反した運転手から「使用者」へ
四 民事法を補完する新しい手法
〔下巻へ続く〕
事項索引(巻末)
判例索引(巻末)
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