憲法の基底と憲法論 ─ 思想・制度・運用 (高見勝利先生古稀記念)
高見勝利先生古稀記念
高見勝利教授の古稀を記念して、第一線の執筆陣が集った待望の論文集。〈思想と理論〉・〈制度〉・〈運用〉の3部構成で、総約1200ページ、計48論稿が揃い、幅広く時代の要請に応える。
◆Ⅰ◆ 思想と理論
1 個人の尊厳〔長谷部恭男〕
Ⅰ はじめに
Ⅱ 人間の尊厳
Ⅲ カントにおける個人の尊厳
Ⅳ 平等な位階と尊厳
Ⅴ 個人の尊厳と権利の制約
Ⅵ むすび
2 「裁判官の良心」に関する一考察─長谷部恭男教授による問題提起を契機として―〔愛敬浩二〕
Ⅰ 「裁判官の良心」論の再活性化?
Ⅱ 「裁判官の良心」と裁判官
Ⅲ 「裁判官の良心」に関する学説状況
Ⅳ 長谷部恭男の「裁判官の良心」論
Ⅴ 長谷部「裁判官の良心」論の理論的基礎
Ⅵ 長谷部「裁判官の良心論」の転回?
Ⅶ 長谷部「裁判官の良心」論と裁判官
Ⅷ 結びに代えて
3 「公共の福祉」とは何か〔渋谷秀樹〕
Ⅰ はじめに
Ⅱ 判例の整理
Ⅲ 理論的検討
Ⅳ むすびにかえて
4 古典的法思想とロックナー判決─ロックナー判決再読―〔阪口正二郎〕
Ⅰ 利益衡量の時代を生きる?
Ⅱ 失われた思考方法としての古典的法思想とロックナー
Ⅲ 「ロックナーという悪夢」と「ロックナーという神話」
Ⅳ 利益衡量論としてのロックナー判決?
Ⅴ もう一つのロックナー判決の読み方
Ⅵ 結びに代えて
5 憲法の前提としての国家と憲法による国家統合〔毛利 透〕
Ⅰ はじめに
Ⅱ 国家イコール法秩序―ハンス・ケルゼン
Ⅲ 憲法の前提としての国家―カール・シュミット
Ⅳ 国家統合のための憲法から憲法による国家統合へ―ルドルフ・スメントと「スメント学派」
Ⅴ 憲法パトリオティズムと国家―ユルゲン・ハーバーマス
Ⅵ 今日の憲法学における国家
6 内閣の憲法解釈〔蟻川恒正〕
序
Ⅰ 「最高責任者」の誘惑
Ⅱ 「至当」の罠
跋
7 「政治」の行方─戦後憲法学に対する一視角―〔林 知更〕
Ⅰ 戦後憲法学の出発
Ⅱ 戦後ドイツ憲法学と「政治」
Ⅲ 再び日本へ
8 「象徴天皇制」のジレンマ―戦後憲法学説はどのように向き合ってきたのか―〔矢島基美〕
Ⅰ はじめに
Ⅱ 新旧憲法における「天皇制」
Ⅲ 新旧憲法の「天皇制」をめぐる学説状況
Ⅳ 検 討
Ⅴ むすびに代えて
9 立憲主義と憲法の正当性〔岩本一郎〕
Ⅰ はじめに―憲法への懐疑
Ⅱ 憲法の危機
Ⅲ 立憲的正当化の理論
Ⅳ 結びに代えて―立憲的正当化の可能性
10 穂積八束を読む美濃部達吉―教育勅語と国体論―〔西村裕一〕
Ⅰ 本稿の課題
Ⅱ 「国体=Staatsform」論の登場
Ⅲ 教育勅語と国体論
Ⅳ まとめに代えて
11 首相・閣僚の神社参拝の合憲性─歴史的アプローチからの再検討―〔大島佳代子〕
はじめに
Ⅰ 明治維新前後
Ⅱ 大日本帝国憲法制定前後
Ⅲ 日本国憲法制定まで
むすびにかえて
12 日本における制度法学の受容〔小島慎司〕
Ⅰ 公約数
Ⅱ 分岐点
結
◆Ⅱ◆ 制 度
13 「国会改革論」雑考―政治学と憲法学の対話―〔岡田信弘〕
はじめに
Ⅰ 検討の対象・素材:《新しい日本をつくる国民会議(21世紀臨調)「政権選択時代の政治改革課題に関する提言」》
Ⅱ 検討の手掛かり
Ⅲ 若干の検討
14 日本国憲法は「合意形成型」と適合的か─高見教授の批判への応答─〔髙橋和之〕
Ⅰ レイプハルトとデュヴェルジェ
Ⅱ 国民内閣制論と合意型デモクラシー論
まとめ
15 選挙権の法的性格と選挙人資格〔辻村みよ子〕
はじめに
Ⅰ 選挙権の資格要件
Ⅱ 成年被後見人の選挙権
Ⅲ 受刑者の選挙権
おわりに
16 議会をめぐる制度・実践・文化─議会制度とopposition─〔只野雅人〕
はじめに―議会制と議会政の間
Ⅰ フランス憲法と反対会派
Ⅱ 法概念としてのoppositionとその帰結
Ⅲ 機能(fonction)としてのopposition
むすび―国会と政治文化
17 憲法改正を発議する国会の性格〔浅野善治〕
Ⅰ 日本国憲法第96条の規定
Ⅱ 第96条第1項の「各議院」の議決
Ⅲ 国家の機関としての国民
Ⅳ 憲法制定権の本質
Ⅴ 憲法改正権
Ⅵ 憲法を改正するということ
Ⅶ 憲法改正の発議をするのは,国会か,国民の代表者か
18 地方議会における一票の較差に関する覚書〔宍戸常寿〕
Ⅰ はじめに
Ⅱ 地方議会の選挙制度
Ⅲ 特例選挙区を除く選挙区間の投票価値の不平等
Ⅳ 特例選挙区制度に関わる論点
Ⅴ 平成27年判決について
Ⅵ 結びに代えて
19 選挙資金規制についての一考察―制度と権利の狭間で―〔川岸令和〕
Ⅰ はじめに
Ⅱ 合衆国における選挙資金規制の枠組み
Ⅲ Buckley判決以降の判例
Ⅳ 2002年超党派政治資金規制法
Ⅴ ロバーツ・コートの積極主義
Ⅵ 制度と権利の狭間に
Ⅶ 結びに代えて
20 オーストラリアにおける両院制─直接公選対等型両院制に関する制度考察─ 〔木下和朗〕
序
Ⅰ 両院制の概要
Ⅱ 政府と議会の関係
Ⅲ 両院制の運用と連邦制―上院の政党化
Ⅳ 政党政治と上院
Ⅴ 上院の立法活動
Ⅵ 両院同時解散・合同会議の実際―1974年の憲法危機
結―オーストラリア両院制の特徴と日本への示唆
21 立法手続における「影響調査」手法の可能性─「より良き立法プロジェクト」への寄与のための試論─〔糠塚康江〕
Ⅰ はじめに
Ⅱ 「影響調査」とは何か
Ⅲ フランスにおける「影響調査」導入への道
Ⅳ フランスにおける「影響調査」制度の導入
おわりに
22 「先住民族であるとの認識」に基づく政策と憲法〔常本照樹〕
Ⅰ はじめに
Ⅱ アイヌ民族の歴史と現状
Ⅲ 「日本型」先住民族政策
Ⅳ アイヌ文化の復興を目指して
23 「違憲判決の効力論」についての覚書〔笹田栄司〕
Ⅰ 最高裁平成25(2013)年9月4日大法廷決定
Ⅱ 日本における付随的違憲審査制の受容と「違憲判決の効力」
Ⅲ ドイツにおける連邦憲法裁判所創設と「違憲判決の効力」
Ⅳ 違憲審査制のあり方と違憲判決の効力
24 比例原則の3つのモデルと事実認識・価値判断〔西原博史〕
Ⅰ 現在の変化した憲法状況における比例原則の意義
Ⅱ 最高裁の違憲性審査基準をめぐる混乱
Ⅲ 基本権解釈論上の方法論争
Ⅳ 比例原則における事実認識問題と価値判断問題
Ⅴ アメリカにおける抽象レヴェルの価値決定との対比
Ⅵ モデル間の相互補完関係と競合関係
25 将来効判決に関する一考察─2008年フランス憲法改正によるQPC手続きを参考にして─〔辻 信幸〕
はじめに
Ⅰ 2008年憲法改正
Ⅱ QPC判決における将来効判決の現状
おわりに
26 「憲法の番人」をめぐる抑制と均衡の力学〔水島朝穂〕
Ⅰ はじめに
Ⅱ 「憲法の番人は誰か」をめぐって
Ⅲ 「憲法の番人」は連邦憲法裁判所
Ⅳ 内閣法制局は「憲法の番人」なのか?
Ⅴ むすびにかえて
27 法執行は合憲,訴訟では違憲―行政機関が制定法の合憲性を支持しないとき―〔紙谷雅子〕
Ⅰ Hollingsworth v. Perry訴訟とそれに至るまでの経緯
Ⅱ United States v. Windsor訴訟の経緯とBipartisan Legal Advisory Group (BLAG)
Ⅲ 合衆国最高裁判所と「当事者適格」
Ⅳ 訴訟参加
Ⅴ 当事者適格の構造
Ⅵ 結果だけ見れば……
28 国家による個人の承認〔館田晶子〕
Ⅰ 国家による個人の把握の「過剰」と「過少」
Ⅱ 個人が把握されない場合について
Ⅲ 把握の意味
Ⅳ 把握されないことの意味
Ⅴ おわりに
29 民営化・公私協働と憲法上の規制に関する一考察〔榎 透〕
Ⅰ 民営化・公私協働と法的規制
Ⅱ アメリカ合衆国の民営化・公私協働
Ⅲ 私人に対する委任禁止法理
Ⅳ ステイト・アクション法理
Ⅴ むすびにかえて
◆Ⅲ◆ 運 用
30 「法律上の争訟」とその周辺概念─憲法裁判を素材にして―〔内野正幸〕
Ⅰ 「法律上の争訟」と司法審査の可否
Ⅱ 国賠訴訟の借用
Ⅲ 「法律上の争訟」の話題性の弱さ
Ⅳ 基本権訴訟をめぐって
Ⅴ 「法律上の争訟」と裁判公開原則
31 宗教的性格のある行事への公人の参列等と政教分離原則─白山比咩神社訴訟最高裁判決まで─〔渡辺康行〕
Ⅰ はじめに
Ⅱ 先行事例としての箕面慰霊祭訴訟と鹿児島大嘗祭訴訟
Ⅲ 白山比咩神社訴訟の概要
Ⅳ 白山比咩神社訴訟の考察
Ⅴ 結びに代えて
32 「非権力的事実行為」の憲法論的考察〔中島 徹〕
Ⅰ 「非権力的事実行為」の概念をめぐって
Ⅱ ある判決の「非権力的事実行為」論
Ⅲ 公務員の表現の自由とその限界
Ⅳ 「監督権限に基づく指導行為」―控訴審判決における憲法論の欠如
Ⅴ 結語―もの言わぬ最高裁
33 衆議院小選挙区制の下での最高裁と国会との継続的対話〔佐々木雅寿〕
はじめに
Ⅰ 中選挙区制の下での継続的対話
Ⅱ 小選挙区制の下での判例
Ⅲ 平成25年判決
おわりに
34 Foreign Precedents in Constitutional Litigation in Japan 〔Hajime YAMAMOTO:山元 一〕
Ⅰ The national context
Ⅱ The empirical research
Ⅲ Analyzing the use of foreign precedents
35 比例原則の根拠と審査内容の比較研究─収容・退去強制の司法審査にみる(国際人権)法の支配─〔近藤 敦〕
Ⅰ 公共の福祉の意義─比較衡量と比例原則
Ⅱ 人権規定にみる比例原則の根拠
Ⅲ 比例原則の審査内容
Ⅳ アメリカにおけるカテゴリカルな3つの審査基準と比例原則
Ⅴ 収容・退去強制をめぐる比例原則と(国際人権)法の支配
Ⅵ 日本における課題と展望
36 出入国管理と最高裁のスタンス─マクリーン判決への再見当─〔齊藤正彰〕
はじめに
Ⅰ 出入国管理と憲法22条─判例の確立
Ⅱ マクリーン判決による継承と展開
まとめにかえて
37 「意に反する苦役」禁止(憲法18条後段)の現代的意義─裁判員制度を合憲とした平成23年最大判を契機に─〔山崎友也〕
Ⅰ はじめに
Ⅱ 判例にみる憲法18条後段論
Ⅲ 裁判員制度の憲法18条後段適合性に関する判例の分析
Ⅳ 憲法18条後段に関する学説の分析
Ⅴ おわりに
38 特定秘密保護法と情報公開〔村上裕章〕
Ⅰ はじめに
Ⅱ 沿 革
Ⅲ 特定秘密保護法の概要
Ⅳ 特定秘密保護法と情報公開
Ⅴ おわりに
39 公務員の給与決定と立法国賠〔渡辺 賢〕
Ⅰ はじめに─問題の所在
Ⅱ 国会議員による給与削減立法の制定と国賠法上の違法性
Ⅲ 給与削減に関わる内閣の行為と国賠法上の違法性
Ⅳ 公務員の労使関係における誠実交渉義務と立法国賠の判断枠組み
Ⅴ おわりに
40 インターネット上のプライバシー侵害に関する一考察〔小倉一志〕
Ⅰ はじめに
Ⅱ インターネット上の判例の概観
Ⅲ 検 討
Ⅳ まとめに代えて
41 砂川判決における「司法審査と民主制」〔棟居快行〕
Ⅰ 問題の所在
Ⅱ 砂川判決「統治行為論」の構造
Ⅲ 砂川判決「統治行為論」のほころび
Ⅳ 「立憲主義」の二つの顔
Ⅴ ふたたび砂川判決「統治行為論」へ―「司法審査と民主制」の観点からの再構成の試み
Ⅵ 小 括
42 スウェーデンにおける違憲審査制の展開〔山岡規雄〕
はじめに
Ⅰ 違憲審査に関する実務と学説
Ⅱ 憲法改革作業における違憲審査権の取扱い
おわりに
43 「憲法上の権利」をめぐる攻防―アイルランド憲法における市民権規定の改正―〔山田邦夫〕
Ⅰ はじめに
Ⅱ 憲法における出生地主義の明文化
Ⅲ 揺れる出生地主義
Ⅳ 国民投票と市民権制度の再変更
Ⅴ 結びに代えて
44 オーストラリア上院の選挙制度と二院制〔大曲 薫〕
はじめに
Ⅰ 1948年の上院選挙制度改革
Ⅱ 上院の選挙制度
Ⅲ 上院の選挙制度改正の効果
おわりに
45 ドイツの小選挙区比例代表併用制におけるいわゆる負の投票価値(Negatives Stimmgewicht)について―政治学的実証研究を応用した選挙制度の構造分析の試み―〔河島太朗〕
Ⅰ 問題の所在
Ⅱ ドイツにおける選挙制度と平等選挙原則の推移
Ⅲ 併用制の構造と負の投票価値の効果
Ⅳ 連邦選挙法第19次改正法と2012年連邦憲法裁判所判決
Ⅴ おわりに
46 イギリスにおけるデモクラシーの形態―ウェストミンスター・モデルの変容と動揺―〔田中嘉彦〕
はじめに
Ⅰ イギリスのウェストミンスター・モデル
Ⅱ ブレア=ブラウン労働党政権下の変容
Ⅲ キャメロン連立政権以降の変容可能性
おわりに
47 法律による緊急事態制度と国家緊急権―ニュージーランド,フランスにおける最近の緊急権行使例を参考に―〔矢部明宏〕
はじめに
Ⅰ 我が国の国家緊急権に関する議論
Ⅱ 英連邦諸国,特にニュージーランドの法律上の緊急権
Ⅲ フランスの法律上の緊急権
おわりに
48 政治部門の憲法解釈行為の検討〔間柴泰治〕
はじめに
Ⅰ 憲法解釈主体としての国家機関
Ⅱ 行為としての「憲法解釈」
Ⅲ 政治部門の憲法解釈行為の内在的制約
おわりに
高見勝利先生略歴
高見勝利先生著作目録
あとがき
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