目次
序 文
◇第1部 リバタリアニズムの理論的基礎◇
1 リバタリアニズムの人間像
一 現実の人間像と理想的人間像との区別
二 現実の人間像
三 理想的人間像について
2 コミュニタリアニズムの批判的検討
一 序
二 『美徳なき時代』の主張
三 コミュニタリアニズム道徳理論の意義と欠陥
3 リバタリアンな正義の中立性
一 善についてのとらえ方に対する中立性と自由主義
二 リバタリアンな正義への批判
1 結果の平等
2 共同体としての国家
三 結 語 ――自由主義的帝国の擁護
4 リバタリアンが福祉国家を批判する理由
一 序
二 福祉国家批判の論拠
1 「福祉への権利」否定論
2 福祉国家は一層多くの貧困を作り出すという議論
3 福祉国家は自発的な相互扶助や援助を妨げるという議論
4 自発的な援助の可能性に関する問題
5 福祉国家は人々の自助努力を妨げるという議論
6 福祉国家はインセンティヴや知識の問題のため(自助努力や相互扶助よりや市場よりも)非効率的であるという議論
7 福祉国家は政府の権力を強化してしまうという議論
8 福祉国家は移民の自由(外国人が入国する自由)と両立しないという議論
三 リバタリアンがある程度の社会保障を認める論拠
5 「みんなのもの」は誰のもの?
一 公共財とは何か
二 市場の失敗
三 政治による再配分と市場における交換
四 公共財の供給は過小にならざるをえないか?
五 市場と政府と公共性
六 市場経済的公共性観への批判
補論 政府の擬似公共性と市場の公共性
6 自己所有権論を批判者に答えて擁護する
一 序
二 高橋の身体所有論批判
1 身体所有権の自明性
2 自己支配が先か、介入排除が先か?
3 規範道徳的議論における直観の位置
4 身体の所有権か、用益権か?
5 「自己」とは何か?
三 立岩の労働所有論批判
1 立岩の「自由」はリバタリアンの言う「自由」ではない
2 正当化されていない平等主義
3 身体への権利と労働の産物への権利
4 帰結主義的議論
四 橋本の「成長論的自由主義」からの批判
1 自己所有権型リバタリアニズム対成長論的自由主義
2 臓器と四肢と労働
3 自己奴隷化契約は難問
五 結 語
7 分配的平等主義を批判する
一 序
二 「平等」の中心性先取りの誤謬
1 「何の平等か?」が根本問題か?
2 平等に重きを置かないさまざまの正義論
三 相対的な平等と絶対的な生活水準
1 等しからざるを憂えずして、貧しきを憂う
2 優先性説
3 十分性説
4 分配政策の実際の受益者は誰か?
四 規範的デフォルト状態としての平等?
1 運の平等主義と無羨望
2 ロールズの「補償原理」
3 代替的出発点
五 分配されるものの量は一定だという前提
1 序
2 直接的費用
3 間接的費用
4 強制的分配の反生産性
六 結 語
8 ナーヴソンの契約論的リバタリアニズム
一 ナーヴソンとは誰か
二 ナーヴソン理論の位置づけ
1 契約論
2 リバタリアニズム
三 ナーヴソン理論へのさまざまな批判と疑問
1 契約論自体に関するもの
2 契約論からリバタリアニズムを導出する議論に関するもの
3 労働所有論の正当化に関するもの
四 結 語
補論 ナーヴソンの近著二冊
1 両書の概要
2 「社会契約」
3 契約論道徳からのリバタリアニズムの導出
4 私有財産
9 自由市場グローバリゼーションと文化的繁栄
一 序
二 グローバリゼーションはなぜ文化の発展を助けるのか
1 金銭的報酬と名声への欲求
2 生活の保障
3 技術的進歩
4 他の社会との接触による文化の変容
5 消費者の豊かさ
6 ロングテール化とニッチの存在
三 文化的ペシミズムの原因
1 画一性か多様性か?
2 趣味の低下・通俗化
3 悲観主義者がなぜこんなに多いのか?
四 楽観論の部分的留保
1 同時代性の崇拝
2 個性の崇拝
五 結 語
◇第2部 自由の法理◇
10 アナルコ・キャピタリズムの挑戦
・警備保障会社
・公共財
・無政府社会における法
・無政府市場社会における刑罰制度
・公的福祉について
・結論なき終末
11 国家と宗教の分離
序
一 信教の自由
二 政教分離
1 判例理論
2 政教分離の意味
3 政教分離の根拠
三 中立性の限界
12 政府の活動はどこまで民間に委ねられるべきか
序
一 政府の果たすべき役割
二 政府活動の「公共性」の意味
三 政府活動の必要性と無用性
四 教育の公共性と私事性
1 教育はいかなる意味で公的なのか
2 教育権者と教育の目的
13 サンスティーンとセイラーのリバタリアン・パターナリズム
序
「リバタリアン・パターナリズム」へのコメント
1 STの「リバタリアン・パターナリズム」は本当はパターナリズムでない
2 STの提案のリバタリアンな要素
3 柔らかいパターナリズムも許されてはならないとき
4 不合理だとされる行動が合理的でありうるとき
5 結 語
補論 サンスティーンの回答など
14 「大地の用益権は生きている人々に属する」 ――財産権と世代間正義についてのジェファーソンの見解
一 序
二 ジェファーソンの四通の手紙とマディソンの一通の手紙の翻訳
1 フォンテヌブロー、一七八五年一〇月二八日 ジェイムズ・マディソンあて書簡(書簡1)
2 パリ、一七八九年九月六日 ジェイムズ・マディソンあて書簡(書簡2)
3 ニューヨーク、一七九〇年二月四日 ジェイムズ・マディソンからジェファーソンあて書簡(書簡3)
4 モンティセロ、一八一三年八月一三日 アイザック・マクファーソンあて書簡(書簡4)
5 モンティセロ、一八二四年六月五日 ジョン・カートライト少佐あて書簡(書簡5)
三 ジェファーソンの財産権観、特に労働所有論
1 自然権としての労働所有権
2 相続と無体財産権は自然権でない
3 左翼リバタリアン的要素
4 農本主義的要素
四 ジェファーソンの世代間正義論、特に定期的憲法制定論
1 原理とその諸帰結
2 マディソンの批判
3 ジェファーソンの憲法観
4 硬性憲法の存在理由
5 国家の時間を超えた同一性
6 プリコミットメントとしての硬性憲法
15 権利主体としての子供
一 序
二 ロックの見解の概観
三 ロック的子供の権利論の検討
1 子供はいかにして権利主体でありうるのか?
2 なぜ親が養育の義務と権利を持つのか?
3 子供はいつ十分な権利を持つのか?
4 子供は不完全な人間でしかないのか?
5 「狂人や白痴」には権利がないのか?
四 結 語
16 リバタリアニズムから見た犯罪への責任
一 序
二 刑罰制度なしの純粋損害賠償
三 リバタリアニズムと修復的司法の比較
四 不法行為法における「共同体的正義」・「個人的正義」・「全体的正義」と刑事責任
17 リバタリアニズムと刑罰論
一 序
二 刑罰の目的
1 犯罪の抑止
2 教育刑
3 処罰感情の満足
4 表明的効果
5 応報的正義
6 刑罰廃止論
三 リバタリアンの刑罰論 ――特にオーツカの主張をめぐって
索 引
内容説明
J. ロック,T. ジェファーソン,R. ノージック,J. ナーヴソンなどの議論を取り上げながら,人格的自由・経済的自由を最大限に尊重する思想・リバタリアニズムlibertarianismを力強く擁護する。〈何がリバタリアニズムの典型的な形態か〉でなく,〈何がリバタリアニズムの望ましい形態か〉をめぐる論究の書。福祉国家論,コミュニタリアニズムを批判的に検討し,政府の存在理由を根本的に問う。