目次
はしがき
第1章 応答社会における弁護士と対話
第1節 応答的社会における、対話の支援としての弁護士業務
1 基本的視点
2 応答的社会と対話
3 紛争に直面した人々に対する人間的理解
4 紛争において「納得」を紡ぎ出す対話と弁護士の役割
5 「正義の総合システム」における法と対話
6 対話プロセスを支える弁護士活動
第2節 人と法を結ぶもの ――弁護士の不在と非専門リソース
1 問題の視点
2 弁護士の不在
3 本人訴訟における法とのコンタクト
4 法とのコンタクトを支える非専門リソース
5 弁護士への見限り
6 非専門リソースとしての暴力団・事件屋・有力者
7 問題の裾野と奥行
第3節 弁護士からみた弁護士ニーズ
――社内弁護士、そして地方開業弁護士としての経験と振り返りから――
1 求められる弁護士像
2 社内弁護士としての出発の前後を省みて
3 社内弁護士としての仕事のなかで
4 独立後の開業弁護士としての仕事
5 大阪大学研究グループによる3つの調査について
6 求められる、日弁連市民会議の要望書への応答
第4節 依頼者、相手方、そして対話
1 誠実性と独立性の狭間で
2 「対話」のアプローチ
3 弁護士はなぜ対話をするのか
4 交渉と対話のアプローチ
5 座標軸としての「対話」の理想―実践と反省
第2章 弁護士の交渉実践と対話
第1節 交渉と対話 ――「対話による交渉」
1 「思いどおりにならない他者」との関係形成
2 「対話」という姿勢
3 「対話」と憲法
4 法の正当性を支え、納得を支える「対話」
5 自律性のサポートとしての励ましと気付きの促し
6 交渉と法情報と「対話」
7 交渉とゲーム理論と「対話」
8 交渉理論と「対話」
9 対話による交渉への取り組み
第2節 「対話による交渉」へのリフレクション ――厳しい感情的対立の振り返りを通じて
反省的な振り返り/社内弁護士としての契約交渉への関与
リフレクション1――責任制限条項の交渉
交渉の雰囲気/相手の失礼な対応に、机を叩いて怒鳴る/「よく言ってくれました」
リフレクション2――企業の再建と交渉
スポンサー経営者との感情的対立/金融機関との交渉/子の引渡しをめぐる事件
/刑事事件における交渉/交渉と感情/感情への積極的取組みと対話による交
渉 ――個人の相互的尊重/「対話」の意味/「対話」と「理由に基づく討論」/
感情の表出としっぺ返し/交渉の実践と「静かなリーダーシップ」/
豪腕ではないが、逃げ出さない/現実の複雑性の認識/健全な利害感覚、熱心さ、
時間稼ぎ、技術的アプローチ/徐々に進み、信念を小さな行為であらわす
【Q&A】
第3節 入会権紛争と交渉
1 依頼を受ける基本的姿勢
2 入会権紛争の事案の概要
3 交渉の前提としての調査活動
4 和解交渉
5 最終解決 ――WIN=WIN RESOLUTION
第3章 ADRと対話
第1節 応答する社会とADR
1 応答する社会における対話によるADR
2 裁判外紛争解決ということ―境界ADRに寄せて
3 現代社会におけるADRの意義
第2節 調停と対話 ――何のために、どのように、人と人との対話にかかわるのか
1 対話への問題関心
2 民事調停の多様な展開と対話のムーブメント
3 対話をめぐる基本問題の提起
4 隣人訴訟事件を振り返る―法と対話の狭間で
5 法的思考と対話
6 対話をめぐる哲学的アプローチ
7 「対立」をどう考えるか
8 対話の意義
9 物語と対話
10 納得と対話
11 調停技法や別席・同席について
12 内省的実践者としての調停者
第3節 ADR法と法律家
1 ADR法の制定
2 日本の司法調停とADR
3 ADR法における法律家と非法律家の新しい協働
4 ADRムーブメントの社会的潮流と展開
5 求められる法律家像の転換
第4節 日米のIT関連訴訟とADRによる解決プロセス
1 問題の視点
2 日米における紛争事例にみる合意形成の一断面
3 若干の検討
第5節 ソフトウェア紛争とその解決プロセス ――ADRという視点
1 ビジネスも紛争も、人によって形作られる
2 ソフトウェア紛争の特質とニーズ
3 紛争解決のプロセスと制度の概観
4 ソフトウェア紛争と民間ADR(1) ――民間ソフトウェアADRの可能性と適合性
5 ソフトウェア紛争と民間ADR(2) ――民間ソフトウェアADRの限界と課題
【補論】「紛争を形作る」ということについて
第1話 OEM契約紛争とADRによる解決/第2話 ソフトウェア開発を巡る問題にどう対処するか
第4章 司法アクセスと対話
第1節 司法アクセスの支援と対話
1 正義へのアクセスと「支援」
2 人々の納得と対話
3 「対話」とは何か
4 自律性の支援と正当性の支援
5 対話と創造性の発揮
6 紛争をめぐるプロセスと対話の支援
第2節 司法ネットとIT
1 「正義へのアクセス」と司法ネット
2 正義へのユビキタス・アクセスの理念からみた司法ネットの在るべき姿
3 司法ネットとIT
4 司法ネットの実現に向けて
第3節 司法情報の提供方法 ――多様な可能性
1 問題の視点
2 情報提供の原点 ――個の多様性を尊重し支える応答的社会
3 多様なニーズと援助のマッチング
4 援助の内容としての多様な法情報
5 「法による解決」と総合的ヒューマンサービスとしての多様な情報提供
6 情報提供の前提としての多様な人間存在への理解
7 援助要請のプロセスと情報提供の多様性
8 情報提供窓口の認知の促進と地域に密着した多様性への対応
9 情報提供における受付と傾聴
10 継続的な改革の必要
第4節 「法へのアクセス」と民間の自律的関与
1 「司法アクセス」と「法へのアクセス」
2 お上の法からわれわれの法へ
3 「民」の声を立法に反映させる試み
4 市場におけるルール形成を目指す準則 ――電子商取引準則
5 企業活動の自律的指針 ――コンプライアンス・プログラム
6 ADRにおけるルール・メイキング
7 Blog利用規約をめぐるネット上の著作権論議を通じて
第5章 実践的法教育と対話
第1節 法科大学院における善き法実践の育成 ――実務家教員としての基本的視点――
1 「正義の総合システム」と法曹の育成
2 善き法実践とその育成のための基本的視点
3 わたくしの担当科目での取り組み
4 学生諸君の志への応答
第2節 交渉教育 ――実践への内省を育む試み
1 はじめに ――現代に求められる専門性と内省的実践
2 交渉の教育
3 スクリプトによる交渉シミュレーション ――民宿との交渉
4 振り返りとファシリテーション
5 教授法の在り方を考える
第3節 ミディエイション・交渉教育の実践
――人とつながり、人をつなぐ、内省的実践の育成への取り組み
1 大学における実践的教育への基本的視点
2 ミディエイション交渉講座のシラバス
3 実際の講座の運営
4 参加学生の感想と教員としての想い
あとがき
事項索引
内容説明
「弁護士はさまざまな場面で社会の応答性を高め、社会的応答を実践する重要な役割を担うものであり、その仕事のプロセスで核をなすのも『対話』である。わたくしはこのように、弁護士のこれからを考える際に、対話のアプローチが一つの視点を提供しうるのではないかと考えている」(はしがきより)。「対話」のアプローチを基本に据えて、弁護士の仕事や諸制度、さらには法曹教育の在り方などを検討する。