目次
はじめに
序――解題に代えて 3
◆第一部 アメリカ法◆
1 ウォレン・コートからバーガー・コートへ
一 ウォレン・コートの業績(26)
(一)ベーカー対カー事件――不平等選挙区の問題(26)
(二)ブラウン事件――人権差別問題(27)
(三)ギデオン事件――刑事手続きをめぐる手続保障の問題(28)
二 ウォレン・コート――その構成(30)
三 ウォレン・コートに対する批判と攻撃(31)
四 フォータス事件の勃発(33)
五 フォータス事件――その余波(34)
六 ニクソンによる新判事任命(35)
七 新最高裁の行方――積極主義か、消極主義か(36)
2 報道の自由と名誉毀損 ――ニューヨーク・タイムズ事件判決とその後の発展をさぐる
一 はじめに(41)
二 従来の法理論(42)
三 ニューヨーク・タイムズ事件(44)
四 ニューヨーク・タイムズ・ルールの発展(48)
(一)刑事事件への適用――ギャリソン対ルイジアナ事件(48)
(二)懲戒解雇への適用――ピッカーリング事件(48)
(三)「公務員」の範囲――ローゼンブラット対ベア事件(49)
(四)ニューヨーク・タイムズ・ルールの公的人物への適用(50)
(五)「現実的悪意」の意味(53)
五 新法理の評価――少数意見に触れつつ(54)
六 むすび――表現の自由に新たなる意味付け(59)
3 名誉毀損訴訟における証拠開示とプレスの編集特権 ――最近の合衆国最高裁判決をめぐって
一 はじめに(61)
二 事案の概要(62)
三 法廷意見(63)
四 同意意見、反対意見(66)
(一)パウエル判事の同意意見(66)
(二)ブレナン判事の一部反対意見(67)
(三)スチュアート判事の反対意見(69)
(四)マーシャル判事の反対意見(69)
五 本判決の位置付け(70)
(一)ニューヨーク・タイムズ・ルール(71)
(二)編集の自由(71)
(三)報道機関に対する証言命令・押収捜索(72)
六 本判決の評価(73)
4 ペンタゴン・ペーパー事件 ――ベトナム秘密文書と報道の自由
一 はじめに(75)
二 事件の経過――「マクナマラ文書」とは(76)
三 事件の経過――法廷での対決(78)
(一)差止請求の根拠(78)
(二)修正第一条(78)
(三)新聞側の主張(80)
(四)地裁の決定(80)
(五)舞台は最高裁に(82)
四 最高裁判決(82)
(一)双方の弁論(82)
(二)判決の内容(84)
五 本判決の意義と残された問題点(88)
六 おわりに――若干の感想(90)
5 表現の自由に関する米国最高裁の判例の展開 ――その概観と若干の考察
一 はじめに(93)
二 サリバン判決の思想的重要性とその後の展開(94)
(一)名誉毀損法の展開(95)
(二)プライバシーの保護(98)
(三)わいせつ文書の規制(99)
(四)事前抑制の禁止(99)
(五)冒的表現の規制(101)
(六)破壊活動的言論の規制(102)
(七)プレスの特権(103)
三 日米の相違(106)
四 おわりに――相違をもたらすもの(109)
◆第二部 日本法――アメリカ法との対比において◆
6 公正な論評
一 はじめに(115)
二 フェア・コメントの概念(116)
三 米国における新法理の展開(118)
(一)ニューヨーク・タイムズ事件(118)
(二)その後の発展(120)
(三)パブリック・フィギュアへの適用(121)
(四)新法理の評価(122)
四 わが国における判例理論(124)
五 わが国判例理論の評価(128)
(一)フェア・コメントと真実証明(128)
(二)フェア・コメントの対象(129)
六 むすび(131)
7 表現の自由と名誉毀損 ――公共の関心事をめぐる問題
一 はじめに(135)
二 本稿の視点(136)
三 公共の関心事と私人の私行(138)
(一)月刊ペン事件大法廷判決(138)
(二)従来の学説(139)
(三)従来の判例(139)
(四)大法廷判決の位置づけ(141)
四 アメリカ法(143)
(一)伝統的フェア・コメントの法理と公共の関心事(143)
(二)ニューヨーク・タイムズ事件以後――公共の関心事か、パブリック・フィギュアか(144)
五 名誉毀損と差止請求(150)
(一)「エロス+虐殺」事件裁判の問題点(150)
(二)北方ジャーナル事件判決(151)
(三)判決の問題点(153)
(四)差止請求の要件(154)
8 真実証明および相当性についての考え方
一 裁判所の相当性判断(157)
(一)「下野新聞」事件(159)
(二)「スロットマシン」事件(160)
(三)学説と下級審のとらえ方(161)
二 表現活動への影響(163)
9 プライバシー侵害と差止請求
一 はじめに(169)
二 プライバシー侵害行為に対し差止請求は認められるか――判例の流れ(169)
(一)映画「エロス+虐殺」上映禁止事件(東京高判昭和四五年四月一三日判時五八七号三一頁)(169)
(二)北方ジャーナル事件(最大判昭和六一年六月一一日民集四〇巻四号八七二頁)(171)
(三)東京地決平成元年三月二四日判タ七一三号九四頁(172)
(四)神戸地尼崎支決平成九年二月一二日判時一六〇四号一二七頁(174)
(五)東京地判平成九年六月二三日判時一六一八号九七頁(174)
(六)東京地判平成一〇年一一月三〇日判タ九五五号二九〇頁(175)
(七)東京地判平成一一年六月二二日判時一六九一号九一頁(176)
三 差止めの実体的要件(177)
四 差止請求権行使の手続的要件(180)
10 利益衡量論
一 はじめに(183)
二 判例における利益衡量論の展開(185)
(一)法令自体の合憲性が問題となったケース(186)
(二)法令の具体的適用の合憲性が問題となったケース(195)
三 判例における利益衡量論の分析(203)
(一)法令自体の合憲性が争われた事件における利益衡量(203)
(二)法令の具体的適用の合憲性が争われた事件における利益衡量(209)
四 米国における利益衡量論の盛衰(213)
(一)利益衡量論の展開(213)
(二)利益衡量論批判(215)
(三)利益衡量論の衰退(216)
五 我が国の学説(218)
六 むすび――判例の利益衡量論の評価(221)
◆第三部 判例評釈◆
11 意見広告と政党に対する名誉毀損 ――サンケイ新聞意見広告仮処分事件
一 はじめに(227)
二 事案の概要(228)
三 決定の内容(229)
四 意見広告の憲法上の保障(232)
(一)意見広告の定義(233)
(二)意見広告の解禁とその機能(233)
(三)意見広告と憲法二一条(236)
(四)意見広告とその問題(237)
(五)意見広告と新聞社の責任(238)
五 政党に対する論争・批判と名誉毀損(239)
(一)問題の所在(239)
(二)政党の公共性と政党批判(240)
(三)論争の自由――自己抑制の回避(241)
(四)本決定理論の位置づけ(243)
六 むすび(244)
12 公正な論評の法理 ――長崎教職員批判ビラ配布事件
一 事 実(247)
二 判 旨(250)
三 評 釈(252)
13 プライバシーの侵害と差止め ――「週刊文春」差止め請求事件
一 事件の経緯(257)
(一)事件の概要(257)
(二)仮処分決定(257)
(三)異議審決定(258)
(四)抗告審決定(261)
二 解 説(264)
(一)プライバシー侵害に事前の差止めは認められるか(264)
(二)事前差止めの要件は何か(266)
(三)本件では右要件は満たされたのか(267)
三 むすび――若干の感想(269)
14 免責による証言強制 ――ロッキード事件嘱託尋問調書の証拠能力
一 事実の概要(271)
二 決定要旨(273)
三 解 説(277)
◆第四部 その他◆
15 違法捜査とその規制・救済 ――弁護の立場から
一 違法捜査とはなにか(285)
二 被疑者の違法取調べはどのように規制・救済すべきか(286)
(一)違法取調べの背景(286)
(二)任意性なき証拠の排除(286)
(三)取調過程の客観化(287)
三 違法な押収・捜索はどのように規制・救済すべきか――排除法則(288)
(一)アメリカ法の展開(289)
(二)わが国の行き方――昭和五三年最判後の展開(292)
四 当該刑事手続外の規制・救済方策はなにか(293)
(一)刑事処分(294)
(二)懲戒処分(294)
(三)国家賠償請求(294)
五 わが国の取調べの現実は特殊ではないか(295)
16 今、報道の自由を語る意味〈講演〉 ――取材源秘匿に関する最高裁決定に読み込むNHKの役割
一 NHK記者証言拒絶事件の背景と事案の概要(298)
二 本件に関する裁判所の判断(301)
(一)地 裁(301)
(二)高 裁(302)
(三)最高裁(303)
三 取材の自由に関するこれまでの判例の流れ(307)
(一)朝日新聞石井記者事件(最大判昭和二七・八・六)(307)
(二)NHK博多駅事件(最大決昭和四四・一一・二六)(308)
(三)毎日新聞沖縄返還交渉秘密電信文漏洩事件(最一小決昭和五三・五・三一)(309)
(四)北海道新聞島田記者事件(札幌高決昭和五四・八・三一)(311)
四 本件の意義(311)
五 本件最高裁決定の射程距離(313)
六 外国(アメリカとドイツ)の状況との対比(315)
七 本件決定をメディア、そしてNHKはどう受けとめ、活かしていくべきか(319)
八 おわりに(322)
17 今、法律家は何をすべきか〈講演〉
法政大学とのつながり(328)
弁護士になった理由(331)
どういう仕事をしてきたか(332)
サリドマイド事件(334)
外務省秘密電信文漏洩事件(339)
弁護士のやりがいとよろこび(347)
司法制度改革が目指すもの(349)
どのような途がひらけているのか(350)
弁護士に求められるもの(355)
[資 料]外務省秘密電信文漏洩事件最高裁判決
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初出一覧(巻末)
判例索引(巻末)
事項索引(巻末)
内容説明
理論的な土台を実務に活かし、日本における「表現の自由」、「報道の自由」の問題の先頭に立ち、切り拓いてきた著者の待望の著作。アメリカ(第1部)や日本(第2部)に関する主要論文、判例評釈に加え、外務省秘密漏洩事件の弁護人の一人として携わった際の「上告趣意」、学生向けに講演した「今、法律家は何をすべきか」など、著者の貴重な生きた実践理論。