最高裁上告不受理事件の諸相 2

学術選書プラス 8

最高裁上告不受理事件の諸相 2

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まだ最高裁はあるか?不受理の実態に迫る

著者 阿部 泰隆
ジャンル 法律  > 司法/裁判制度/弁護士論
シリーズ 法律・政治  > 学術選書プラス
出版年月日 2011/10/30
ISBN 9784797212587
判型・ページ数 A5変・384ページ
定価 13,200円(税込)
在庫 品切れ・重版未定

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上告が民事訴訟法によって法令違反と憲法違反に限られるので、年間数千件に上る上告事件はこれを根拠に機械的に棄却しているかに見える。しかし事件によっては十分納得のいかないものもある。本書はそれらについて、不受理にどうしても納得出来ない著者の見解を示している。熟読されたい。行政事件訴訟に限られているが、ほかにそういう例はないのか。

  阿部泰隆 著 (弁護士)


はしがき

序 章 三行半上告棄却判決の問題性
 一 三行半の上告棄却判決・決定は違法
  1 三行半判決とは
  2 判決の理由附記の要求
  3 長谷部,位野木説=三行半の例文判決は違法
  4 若干の補足
 二 司法改革への提案
  1 多忙は言い訳にならない
  2 理由を付けるための制度整備
  3 当事者の悩みを共有する裁判官を
  4 職業裁判官の官僚制的病理の打破策

第1章 違法な都市計画事業を事後的に正当化する都市計画変更決定の誤魔化しの違法性
 コメント
 意見書
 一 はじめに,本件の論点
 二 都市計画変更決定の違法性
  1 都市計画決定の裁量
  2 違法な既成事実を正当化する場合における計画変更の裁量の制約
  3 当局の挙げる計画変更の理由の妥当性?
  4 代替案不採用の違法性
  5 都市計画審議会の審議の違法性
 三 取消判決の効力の範囲
 四 事情判決
 五 違法性の承継

第2章 京都大学井上教授事件 大学教員任期制法の騙し討ち
 コメント
 第1節 意見書―-大阪高裁平成18年1月26日民事9部判決について―-地位確認訴訟
要  旨
  1 本件へのアプローチの方法
  2 再任拒否の違法と救済方法
  3 「同意」の瑕疵と救済方法
本  文
 一 はじめに
 二 本件の異常性と法解釈・事実認定の視点
 三 任期制法と憲法23条の学問の自由の関係
  1 原 判 決
  2 2,3号任期制は合理的
  3 1号任期制の矛盾・問題点,違憲の可能性大
   (1) 任期制法の矛盾
   (2) 隠れたる分限免職
   (3) 評価基準のない,恣意的な分限免職
   (4) 大学の死
   (5) 国会附帯決議の意義
   (6) 1号任期制の限定の必要・1号任期制への非該当性
  4 任期制法や大学の自治尊重という原 判 決の考え方は教員の学問の自由を脅かす
  5 大学の自治的規定の意味―治外法権になってはならない
 四 京大の任期制と学問の自由
  1 任期制の事後的導入の違憲性
   (1) 原 判 決
   (2) 内定者の地位を侵害する違憲の判断
  2 内規は恣意的な運用がなされないような保障をしているか
   (1) 原 判 決
   (2) 司法審査なき自由は恣意
  3 再任審査規程の不備
   (1) 原 判 決
   (2) 恣意の排除は不十分
  4 再任審査ルールの事後的制定
   (1) 原 判 決
   (2) ルールの制定時期は研究所自治の範囲外
 五 同意の錯誤ないし情報提供義務不履行による同意の瑕疵
  1 原 判 決
  2 「同意」書面の読み方
  3 敷引きに関する最高裁判決
  4 有期労働契約の締結,更新及び雇止めに関する基準(平成15年10月22日,厚生労働省告示第357号)
  5 ま と め
 六 事務長の発言の意味
 七 任期のみの無効
 八 再任請求権
  1 原 判 決
  2 再任請求権はある―-委任立法,内規の法的拘束力
  3 私学の例
  4 学長と研究所の関係 (省略)
 九 義務付け訴訟 (省略)
 十 ま と め

 第2節 意見書―-大阪高裁(平成16年(行コ)第54号)平成17年12月28日判決「失職」の処分性
要  旨
本  文
 一 はじめに
 二 本件の異常性と法解釈・事実認定の視点
 三 学問の自由・大学の自治の意味
  1 学問の自由は,教員の大学に対する関係でも保障されるべき
  2 研究所の自治と内規の意味,内規は委任立法
 四 大学教員の任期制がもたらす学問の自由侵害 (省略)
 五 再任拒否による「失職」処分
  1 恣意をできるだけ排除するしくみ
  2 「処分性」肯定の方法
  3 最高裁判例に見る処分性の緩和も参考に
  4 韓国の大法院と憲法裁判所がとっている見解
  5 原審の判断の批判
   (1) 再任審査ルールを法律で定めていないことについて
   (2) 外部評価,職務上の義務?
   (3) 外部評価に基づく
   (4) 任期付き教員の強い身分保障?
   (5) 再任請求権はあるか
   (6) 学長への拘束
 六 任期への「同意」の瑕疵
  1 同意書面の読み方
  2 任期制の周知は「望ましい」というだけか
  3 敷引きに関する最高裁判決 (省略)
  4 事務長の説明の意味
  5 上告人の内心
  6 同意の瑕疵は任期なき任用をもたらす
 ま と め

第3章 神戸空港小型機用地訴訟 法的に売れない飛行場用地を売れるという初歩的な法解釈の誤り
 コメント
 第1節 神戸空港訴訟平成17年度控訴理由書
 一 はじめに
  1 これまでの訴訟の経緯と原 判 決の実体的違法性及び釈明義務違反
  2 本件のポイント
 二 違 法 性
  1 違法性判断回避の違法性
   (1) 原 判 決
   (2) 過失判断には違法性の程度を判断することが必要
  2 本件公金支出の違法性
 三 過  失
  1 これまでの判例との関係
  2 原 判 決
  3 原審での求釈明における指摘
  4 小型固定翼機用地を飛行場の外に出せとの国の指示の意味は?
   (1) 市議会での答弁,「いわば国のほうの指示で入れてない」
   (2) 国交省との面談,「入れなくて良いと言ってない」
  5 平成16年訴訟神戸地裁判決の誤り
  6 代理人の質問に対する国土交通省の見解
  7 ま と め
 四 契約の無効と公金支出の違法の関係
  1 原 判 決
  2 契約の違法有効と,公金支出の違法性の関係
  3 小型固定翼機用地の違法と地盤改良契約の違法の関係
  4 瑕疵の治癒?
 最 後 に

 第2節 平成17年度神戸空港訴訟上告受理申立理由書

第4章 ネズミ捕り訴訟 速度規制裁量の極度の濫用の公認,屁理屈のオンパレード
 コメント
 一 事件の概要
 二 経  緯
 三 本件は,善良なドライバーが運悪く捕まったケースで,救済すべき良い例であること
  1 筋の良い事件
  2 原告の情状
  3 民事38部決定
  4 被告の交通事故分析のずさんさ
 四 本章の構成

 第1節 控訴理由書等
 第1款 控訴理由書
 一 はじめに
 二 尋常でない経過をたどったとする異常な見方
 三 速度規制の裁量の限界
  1 裁量統制の一般論
  2 速度規制の見直しは論点ではない
  3 個々の運転手による自分勝手な判断との誤解
  4 本件道路の具体的状況をめぐる誤解
 四 ネズミ捕り取締方法の違法性
  1 原 判 決の判断
  2 現場裁量の限界
  3 刑事法的観点からの検討
 五 警察の誤りは許され,警察の誤りに誤導された庶民はなぜ助からないのか,駐車違反関係
  1 前歴無効と本件処分の瑕疵の関係
  2 間違った立て看板に基づく駐車違反取締りの違法性
  3 警察庁通達の意義
   (1) 原 判 決11頁の判断
   (2) 控訴人の反論
 六 処分を軽減しないことの裁量逸脱,原告は悪質運転手か,速度規制の法的性質
  1 抽象的危険さえない軽微な違反
   (1) 原 判 決
   (2) 速度制限違反の法的性質
  2 原告は身勝手?
   (1) 原 判 決
   (2) 警察こそ身勝手
   (3) 原告は善良な運転手であること
  3 交通死亡事故との関係
 七 手続上の違法
  1 本件取消処分の手続の違法
  2 理由附記の違法
  3 異議棄却決定の理由不備の違法
 八 誤測定の違法
 第2款 準備書面(2)
 11月14日第一回口頭弁論における裁判長の釈明に答える
  1 誤測定の違法について
 第4章 添付資料 ―-速度違反の現場・規制の実情について―-
  2 運転免許取消処分取消訴訟の訴えの利益(行訴法9条かっこ書き)について
  3 甲10号証(警察庁交通規制基準)の性格
  4 ネズミ捕り違法の法的説明
 第3款 控訴理由書の追加
  1 最高速度指定のための前提となる事実の誤認について
  2 いわゆるおとり捜査との関連
  3 法定速度違反の故意で,指定速度違反をした場合の故意の有無
  4 過失違反行為への制裁は軽減を
  5 本件最高速度規制の違憲性について
  6 調査嘱託について
  7 被控訴人の沈黙と公平な裁判について
  8 控訴人への釈明について
 第4款 結審に当たって

 第2節 上告受理申立理由書
要  旨
本  文
 一 誤測定の違法
 二 最高速度指定の裁量濫用
  1 「まったく事実の基礎を欠き」という裁量審査方式は判例違反
  2 原処分は「まったく事実の基礎を欠く」
  3 考慮すべき事項を考慮していない違法
  4 交通規制基準に照らした最高速度指定の審査方式
 三 ネズミ捕りの裁量濫用
 四 誤導された駐車違反の取締りは違法
 五 例外裁量権を行使しない違法
 六 手続上の違法
 第3節 上告理由書
要  旨
 一 本件最高速度規制の違憲性について
 二 警察の誤りを棚に上げて,それに誤導された運転手だけを取り締まることは,取り締まる国家権力は信義にかなったものなければならない,
    汚れていてはならないとの原則に反し,違憲であること
 三 原 判 決は司法審査権を放棄した違憲性があること

第5章 土地収用法77条に定める建物移転料補償の考え方
コメント
意見書
要  旨
 一 現行法のしくみ
  1 憲法原則―損得なしの原則
  2 建物の補償に関する移転主義と収用主義
 二 再建築費による補償の手法の導入(用対連)と原 判 決の採用
  1 用対連の新基準
  2 原 判 決による用対連基準の採用
 三 用対連基準は違法・違憲
  1 法77条と比較した法79条の意義は喪失
  2 「移転」の意義を再建築費とするのは語義に反する
  3 用対連基準は起業者の内部基準で,裁判所がそれを基準とすることは違憲
  4 現実・実態からの正当化は失敗
 四 結  論
 五 再築補償説の妥当範囲―予備的な議論
  1 二者択一手法は本件には妥当しない
  2 市場価格,機能回復の視点は本件では妥当しない
  3 本件の「再築補償」の考え方

第6章 御影工業高校跡地コンペ方式売却違法事件
コメント
上告受理の申立理由書
 一 「その他の契約」の意義に関する原 判 決の明白な誤り
  1 原 判 決の不誠実と理由の欠如
   (1)  1 審判決
   (2) 原 判 決
   (3) 1 審判決は予想外の法律判断
   (4) 原審における申立人(参加人)の主張
   (5) 原 判 決の理由の欠如
  2 原 判 決の明白な過誤
  3 法解釈上・地方行政上重要課題
  4 公募提案方式(コンペ方式)による公有不動産の売却は違法であること
   (1) 問題の所在
   (2) 文理解釈
   (3) 実 質 論
   (4) 損  害
   (5) 従来の判例学説は問題点に気が付いていないこと
 二 「その性質又は目的が競争入札に適しないこと」該当の有無
  1 原 判 決
  2 条件付一般競争入札をできるだけ追求すべきこと
  3 住民の意向反映の不備
  4 売却方法の変更の評価
  5 価格を重視しない随意契約は違法であること
  6 価格を著しく犠牲にすることは違法
 三 選考過程の違法=裁量濫用
  1 阪神電鉄が御影地区まちづくり協議会に入っていたこと(省略)
  2 価格調書の事前(内容点採点前)開封
  3 価格点の算出方式
  4 選考委員が専門外の判定を適切にできるとするのは経験則違反
  5 小  括
 四 ま と め

第7章 給与条例主義違反の給与支出に関する住民訴訟法上の法律問題
コメント
意見書
 一 非債弁済
  1 原 判 決
  2 給与条例主義違反
 二 故意過失
  1 原 判 決
  2 元町長は違法状態を知っていたこと
  3 過失責任主義の趣旨
  4 違法性阻却?
  5 遡及支給条例による瑕疵の治癒
  6 責任の分割,収入役の責任
  7 ま と め
 三 特殊勤務手当
 四 オンコール当番

第8章 特商法違反事件,消費者行政における権力濫用
コメント
 第1節 控訴審での口頭意見陳述―-控訴審の審理に当たって裁判所に是非ご理解頂きたいこと―-
  1 控訴人が悪徳業者であれば訴訟で争うはずがなく,われわれも名誉にかけて,代理人を務めるはずがないこと
  2 本件は,行政冤罪事件とも言うべきものであること,思い込みを排除して,事実を客観的に認定すべきであること
  3 どっちから,来てくれ,行くと言ったという微妙なやりとりで,契約を規制すべきではないこと
  4 控訴人は,行政の通達と指導通りに行動したものであること
  5 本件処分にはそのほかにも多数の杜撰さ,法的瑕疵があること

 第2節 上告受理申立理由書
 はじめに ~本件訴訟の社会的意義及び訴訟法上の意義
 第一款 理由の要旨
 一 事案の概要
 二 経験則,採証法則,釈明義務,弁論主義違反について
 三 特商法その他法令解釈の誤り
 第二款 弁論主義違反,採証法則違反,経験則違反
 一 A案件について
  1 関係者供述の信用性に関する判断の経験則違反
   (1) A供述・証言の信用性の欠如について
   (2) H供述の信用性
   (3) T陳述書の信用性
   (4) A供述・証言及びAの妻の供述と矛盾する客観的証拠 (省略)
   (5) A作成のメモについて
  2 契約に際しての説明に関する判断の経験則違反
   (1) 契約書が契約書であることの説明の有無・仕方について
   (2) Aの誤解についての認識可能性
  3 Aの眼疾について
  4 ま と め
 二 B案件について
  1 原 判 決の事実認定と弁論主義違反
  2 B供述・証言の信用性の欠如と経験則違反
   (1) Bの虚偽供述・証言と信用性
   (2) 証言と物的証拠の優劣
   (3) その他Bの虚言
  3 「一晩考えさせてくれ」と10回以上も言ったとの点について
  4 電話芝居についての経験則違反の認定について
  5 S供述・証言の信用性
  6 M・TとBの交渉について
 三 C案件について
 四 立証責任について
 五 ポリグラフ検査
 六 勧告に関する事実認定について
 七 ま と め
 第三款 特定商取引法その他の法令解釈の誤り
 はじめに
 一 特商法26条1項1号の「請求」の解釈の誤り
  1 通達上の例示に関する原 判 決の論理的誤り
  2 信頼保護原則違反
  3 ま と め
 二 特商法7条2号該当性(重要事実の不告知)の判断に関する法令解釈の誤り(A案件関係)
  1 はじめに
  2 一部複写式の契約書を採用することの合理性
  3 複写式契約の社会一般における一般的通用性
  4 申立人の営業形態から営業員が契約書を騙し取ることはありえないこと
  5 いわゆる誤認契約の総数について
  6 原 判 決の誤り
  7 ま と め
 三 不利益処分における裁量に関する解釈の法令違反・先例違反
  1 裁量に関する解釈,先例
  2 裁量濫用となる具体的な要素の不考慮
   (1) 原 判 決の判断
   (2) 不実告知・迷惑勧誘について
   (3) 重要事実の不告知について
   (4) 申立人の主張の一貫性について
   (5) 申立人が業界大手であることについて
   (6) 公表の考慮除外の違法
   (7) ま と め
 四 被処分者の有責性について
  1 制裁には過失が必要
  2 本件の場合
  3 原 判 決の誤り
 五 比例原則違反
 六 処分の可分性
 七 平等原則違反について
 八 行政手続法13条1 項2号違反
 九 ま と め

事項索引

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