行政訴訟と共同利益論

学術選書

行政訴訟と共同利益論

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行政訴訟により保護されるべき権利利益とはいかなるものか。共同利益論の見地から、その基礎理論のみならず、具体的展開を論じる。

著者 亘理 格
ジャンル 法律  > 行政法
シリーズ 法律・政治  > 学術選書
出版年月日 2022/04/25
ISBN 9784797267914
判型・ページ数 A5変・466ページ
定価 9,680円(税込)
在庫 品切れ・重版未定

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行政訴訟により保護されるべき権利保護とは
 
行政訴訟により保護されるべき権利利益とはいかなるものか。「第Ⅰ部 行政訴訟の基礎概念」、「第Ⅱ部 景観保護と地域住民の共同利益」、「第Ⅲ部 民間化と公役務利用者の保護」、「第Ⅳ部 共同利益と環境団体訴訟」の4つに分類。共同利益論の見地から、その基礎理論のみならず、具体的展開を論じた待望の書。

  

『行政訴訟と共同利益論』

  亘理 格(中央大学法学部教授) 著

【目 次】

・はしがき

◆第Ⅰ部 行政訴訟の基礎概念◆
【解題】

◆第一章 行政訴訟における「裁判を受ける権利」
 第一節 問題の所在と考察の視座
  一 「裁判を受ける権利」という視点の重要性
  二 「裁判を受ける権利」保障の人権規範性
 第二節 「司法国家制への転換」の意味
  一 「列記主義」から「概括主義」への転換
  二 明治憲法下の「列記主義」─立法政策至上主義
  三 「概括主義」への転換の意味
 第三節 「法律上の争訟」概念の再構成に向けて
  一 問題の所在
  二 課題としての「法律上の争訟」

◆第二章 行政訴訟の理念と目的
 第一節 行政訴訟の構造
  一 行政訴訟の基本構造をどのように捉えるべきか?
  二 抗告訴訟の独自性
  三 「裁判を受ける権利」保障との関係
 第二節 行政訴訟における利益
  一 行政法で保護される利益の独自性─民事法上の権利利益との差異
  二 「共同利益」ないし「集団的利益」に基づく行政訴訟の承認
 第三節 行政訴訟における適法性
  一 行政訴訟における「法律上の争訟」とは何か?
  二 「取消訴訟は公定力排除訴訟である」という取消訴訟観について
 第四節 行政訴訟の制度目的─主観訴訟と客観訴訟の区別について
 第五節 むすび

◆第三章 行政訴訟における「法律上の争訟」
 第一節 はじめに─「司法」・「法律上の争訟」が問題となるのは何故か
 第二節 通説的な「司法」・「法律上の争訟」概念
  一 「司法」と「法律上の争訟」
  二 司法権=法律上の争訟=主観訴訟のトリアーデ
  三 「法律上の争訟」概念の機能─判例上の多様な役割
  四 行政訴訟とトリアーデ
 第三節 「司法」
  一 「司法」=「法律上の争訟」?
  二 何が提訴の可否を決すべきか
 第四節 主観訴訟と客観訴訟
  一 二元的訴訟目的観
  二 二元的訴訟目的観の問題点
 第五節 「法律上の争訟」と民事訴訟モデル
  一 モデルとしての民事訴訟
  二 民事法的発想克服の方向性
 第六節 むすび

◆第四章 「司法」と二元的訴訟目的観
 第一節 問題の所在
  一 設問の背景
  二 Xの立場と主張
  三 設問の趣旨
 第二節 「司法」の観念
 第三節 主観訴訟と客観訴訟
  一 二元的訴訟目的観
  二 二元的訴訟目的観への疑問
  三 設問の訴訟は客観訴訟か
 第四節 「法律上の争訟」と「事件性」
  一 「事件性」=「法律上の争訟」という通説的理解
  二 「事件性」の再定義
  三 事件性と基本権訴訟論
 第五節 ふたたび主観訴訟と客観訴訟について
  一 「非主観的訴訟」概念の可能性
  二 設問のケースについて

◆第五章 行政訴訟の基礎概念─学説的遺産の再評価という視点から
 第一節 はじめに
 第二節 原告適格と「法律上の争訟」
  一 九条二項新設の意味─利益侵害状況を踏まえた法体系的根拠法規解釈
  二 「法的保護に値する利益」説の貢献度
  三 九条二項活用の方向性
  四 「司法」・「法律上の争訟」概念の再定義
 第三節 抗告訴訟と公法上の確認訴訟
  一 公法上の法律関係確認訴訟の活用
  二 処分性拡大論と当事者訴訟活用論
  三 抗告訴訟と当事者訴訟の連携
 第四節 司法像
  一 実効的権利救済─行政計画の処分性に限定して
  二 立法権・行政権に対する司法権の立ち位置
 第五節 むすび─司法固有の論理について

◆第Ⅱ部 景観保護と地域住民の共同利益◆
【解題】

◆第一章 都市計画と歴史的景観保護
 第一節 はじめに
 第二節 文化財保護法制の限界─重点保護主義の問題点
  一 古都保存法に基づく歴史的風土保存制度
  二 伝統的建造物群保存制度
  三 重点保護主義に対する批判
 第三節 財産権に対する過度の配慮?
 第四節 自治体の自主的景観保護行政─非権力的指導と援助に限定されるべきか?
 第五節 総合的都市景観保全法制の必要性
  一 縦割行政組織
  二 多様で複合的な都市景観の保存のために
 第六節 むすびにかえて─眺望景観の保護

◆第二章 景観保護の法と課題─アメニティ保障の視点から
 第一節 はじめに
 第二節 いかなる景観を保護すべきか?
  一 重点保護主義─現行法の考え方
  二 アメニティ保障としての景観保護へ
 第三節 いかに保障すべきか?─フランス景観保護法の場合
  一 土地占用プラン(POS)に見る市街地景観保護
  二 フランスの景観保護規制からの示唆
 第四節 何が必要か?
  一 地域像・街並み像の明確化
  二 共有資産としての景観

◆第三章 土地利用規制論と景観法
 第一節 はじめに─景観保護と土地利用規制法制の関係
 第二節 景観法の仕組みと意義─地域指定による景観保護を中心に
  一 景観計画と景観計画区域
  二 景観地区と準景観地区
  三 アメニティ保障としての景観法
 第三節 景観法の限界
  一 形態意匠規制を主にした景観保護
  二 五地域区分に伴う計画白地地域の発生
 第四節 我が国の土地利用規制法制の問題点─都市計画を中心に
  一 必要最小限規制原則─総合計画性の欠如
  二 全国一律の地域地区制─計画自治権の欠如
 第五節 むすび

◆第四章 共同利益としての景観利益の保護─景観法と国立マンション訴訟を題材に
 第一節 景観法はどのような法律か?
  一 「景観緑三法」の制定
  二 景観法の仕組み
 第二節 景観法はいかなる意義を有するか?
  一 アメニティ保障という視点の確立
  二 景観保護のための手続参加制度の拡充
 第三節 国立マンション訴訟から景観法を見ると
  一 国立マンション事件
  二 伝統的な景観利益観─民事控訴審判決の問題点
  三 景観法への期待

◆第五章 環境行政法における公益・個別的利益・共同利益
 第一節 はじめに
 第二節 公益への個別的利益の組み込み─公共施設・公共事業の公益性をめぐる事件を例に
  一 問題の所在
  二 公益vs公益対立型の公共施設訴訟
  三 公益vs人格的利益対立型の公共施設訴訟
 第三節 公益達成のための手段としての個別的利益の法的保護利益性
  一 国立マンション訴訟における二つの住民側勝訴判決
  二 二つの第一審判決の共通点
  三 二つの第一審判決間の差異
  四 公益と個別的利益の媒体としての共同利益
 第四節 むすび

◆第六章 環境権論の再構成
 第一節 はじめに
 第二節 環境法における公益と私的権利利益
  一 公共財としての環境
  二 環境法における利害関係
  三 環境権
 第三節 環境権論
  一 主張内容
  二 功 績
  三 弱 点
 第四節 環境権論再構成の諸類型
  一 共通項と対立軸
  二 権利志向型の再構成
  三 環境秩序志向型の再構成
  四 手続志向型の再構成
  五 小括─権利として論ずることの意義
 第五節 環境権論の将来像
  一 憲法上の環境権の意味─「良質な生活環境」の保障
  二 実体的権利としての環境権
  三 手続的権利としての環境権
  四 環境権の全体像

◆第Ⅲ部 民間化と公役務利用者の保護◆
【解題】

◆第一章 公私機能分担の変容と行政法理論
 第一節 はじめに
  一 公的事務の担い手の共同化─公的事務領域への共同利益主体の進出
  二 公的事務の民間化と契約化─公的事務の民間への流出
 第二節 共同利益を組み込んだ行政法理論
  一 「一般公益への吸収」型思考の打破
  二 共同利益の制度化
 第三節 公的事務の民間化・契約化への対処
  一 「民間化できる事務」と「民間化できない事務」
  二 契約相手方の法的地位保障
  三 利用者の法的地位保障
 第四節 むすび
  一 国民の法的地位論の拡充
  二 行政契約法論の深化
  三 行政が果たすべき役割を論じる場の設定

◆第二章 フランス法における公私協働─行政契約法の基層という視点から
 第一節 はじめに
 第二節 公役務利用者の法的地位
 第三節 公私協働と行政契約法理
  一 フランス行政契約法理の基層
  二 「適法性の規整者」としての行政裁判所
 第四節 むすび

◆第三章 フランスのPFI的手法─「公役務の委任」(Délégation de service public)を素材に
 第一節 はじめに─PFIと「公役務の委任」
 第二節 「公役務の委任」とはどのようなものか?
  一 「公役務の委任」の概念─公共調達契約との差違を中心に
  二 「公役務の委任」の判別基準
  三 「公役務の委任」に該当しない行政契約
  四 境界域にある行政契約
 第三節 「公役務の委任」の契約締結手続
  一 公共調達契約(marchés publics)の場合─二種類の入札制度(adjudication et appel d'offres)
  二 「公役務の委任」の場合
  三 「公役務の委任」契約締結手続の特色
 第四節 契約内容に関する法規制
  一 契約継続期間の制限及び延長可能性
  二 事業者による目的外負担の禁止
 第五節 「公役務の委任」のための公物利用
  一 国有公物の長期占用許可
  二 不動産永代賃貸借制度(bail emphytéotique)
  三 公有不動産永代賃貸借制度の法的仕組み
  四 具体例
 第六節 結びにかえて

◆第四章 保育所利用関係における合意の拘束力─保育期間中における保育所廃止・民営化に対する法的制約の存否問題を素材に
 第一節 はじめに
  一 行政契約における行政行為との並存・交錯
  二 八郎潟干拓地訴訟
 第二節 公立保育所の民営化と合意の拘束性─問題の所在
  一 高石市立東羽衣保育所民営化事件─保育実施期間中の保育所廃止により保育所変更を余儀なくされた事件
  二 本件保育所廃止処分の適法性─第一審判決の判断
 第三節 保育所選択権と保育期間中の保育所廃止措置
  一 保護者の保育所選択権保障─一九九七年児童福祉法改正の趣旨
  二 第一審判決の論理
  三 保育所廃止に伴う保育所の変更に対する法的制約
 第四節 契約としての保育所利用関係からの帰結
  一 行政契約法における契約条件・契約条項の一方的変更の許容性
  二 契約条件の変更と「事情の変更」
  三 一方的変更・修正に対する実体的制約
  四 結 論
 第五節 保護者に対する保育の実施解除理由の説明及び意見聴取の義務(児童福祉法三三条の四)について
 第六節 むすびに代えて

◆第五章 公立保育所廃止・民営化訴訟における相対効的紛争解決の可能性─取消判決の第三者効及び国家賠償法上の違法性を中心に
 第一節 はじめに
 第二節 公立保育所廃止処分取消判決後の事後処理のあり方─取消判決の効力論との関係で
  一 取消判決の第三者効(対世的効力)
  二 公立保育所廃止処分取消判決後の「後始末上の問題」
 第三節 事情判決の可能性
  一 事情判決制度の趣旨
  二 事情判決積極的活用論の存在
  三 公立保育所廃止処分取消訴訟における事情判決の可能性
 第四節 違法な保育所廃止処分による国家賠償責任
  一 国家賠償制度が果たし得る救済機能の独自性
  二 国家賠償における公権力行使の違法性と取消訴訟における処分の違法性との基本的同一性
  三 国家賠償法一条一項の違法性判断における救済法的考慮─負担の公平
  四 国賠法上の違法性判断の類型化─定型的行政処分と定型的行政処分以外の公権力行使との区別の必要性

◆第Ⅳ部 共同利益と環境団体訴訟◆
【解題】

◆第一章 共同利益論と「権利」認定の方法
 第一節 はじめに
 第二節 何故、「共同利益」を論ずべきか─権利利益の実体論の必要性
  一 環境権論における公共の利益と私的権利利益
  二 判例における「一般公益への吸収」型思考─抗告訴訟の原告適格
 第三節 共同利益論の性格と効用
  一 社会実態に即した利益概念としての共同利益
  二 共同利益論の効用
 第四節 共同利益に関する「権利」認定のロジック
  一 広い意味での「権利」─権利と「法律上保護された利益」の区別の曖昧さ
  二 互換的利害関係論─ドイツ法及び山本隆司氏からの示唆
  三 公私協働が「権利」を創出する可能性
  四 M・オーリウの「管理状態における協働からの権利創出」論
  五 小 括
 第五節 共同利益の制度化─共同利益論からの展開可能性
  一 「制度化」の意味
  二 参加制度
  三 団体訴訟
 第六節 おわりに

◆第二章 環境公益訴訟─環境団体訴訟の法制化を中心に
 第一節 はじめに
  一 環境公益訴訟の概念と範囲
  二 環境団体訴訟の法制化
 第二節 環境団体訴訟について
  一 団体利益と個人利益間の関係性の差違に応じた分類
  二 各類型に即した検討
 第三節 環境公益団体訴訟の制度設計─事前参加手続との関係を中心に
  一 ドイツ型団体訴訟とフランス型団体訴訟
  二 いかなる団体訴訟を採用すべきか
 第四節 むすびに代えて


・事項索引(巻末)
・判例索引(巻末)

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