『ブリッジブック刑法の基礎知識』ブリッジブックシリーズ
町野 朔(上智大学生命倫理研究所教授)
丸山雅夫(南山大学大学院法務研究科教授)
山本輝之(成城大学法学部教授) 著
【目 次】
はしがき
第1章 刑法の基礎知識
T 刑法とは何か
1 「犯罪」と「刑罰」の根拠
(1)常識的な判断/(2)法律が決める *1 刑罰の軽減事由と加重事由
2 犯罪と刑罰
(1)自然犯と法定犯/(2)わが国の刑罰
3 犯罪と刑罰を規定する「刑法」
(1)刑法の意義 *2 特別刑法と行政刑法/(2)日本の刑法
4 刑法の近代化 ――大陸型刑法の変遷
(1)ヨーロッパの前近代における刑法 *3 アンシャン・レジーム期の刑事司法
(2)ヨーロッパ近代市民社会と刑法
U 犯罪論をめぐる理論の対立 ――学派の対立
1 2つの仮説
(1)旧派の刑法理論 *4 2つの旧派/(2)新派の刑法理論 *5 新派刑法理論の2つの方向
*6 リストとビルクマイヤーの論争
2 日本への影響
(1)日本における学派の対立 *7 滝川事件 *8 ナチスの刑法/(2)対立から調和へ
1 法益の保護と社会秩序の維持
(1)法益の保護/(2)社会秩序の維持
2 人権の保障
3 調和的な運用の必要性
第2章 刑法の基本原理
T 法律が犯罪と刑罰をつくる ――罪刑法定主義
1 罪刑法定主義の目的
(1)罪刑法定主義の意義 *9 罪刑法定主義のあり方
(2)基本原理としての法律主義 *10 官 報/(3)法律主義の拡張
2 法律主義から導かれる予告機能
(1)慣習で処罰することはできない/(2)遡って処罰することはできない/ (3)借り物の罰則で処罰することはできない
*11 看護師による秘密漏示の処罰
3 罪刑法定主義の考え方の徹底
(1)罪刑法定主義の実質化/(2)あいまいな罰則は許されない *12 絶対的不定刑と絶対的不定期刑/
(3)罰則の内容は適切でなければならない *13 実体的デュー・プロセス
U 責任がなければ処罰されない ―― 責任主義
1 責任主義の意義と重要性
(1)結果責任から規範的責任へ/(2)責任主義の意義)
2 責任主義の内容
(1)主観的責任の原則 *14 結果的加重犯の扱い/(2)主観的責任の帰結 *15 原因において自由な行為の理論
3 消極的責任主義と積極的責任主義 *16 執行猶予制度 *17 起訴裁量主義
V 刑法はでしゃばらない ―― 謙抑性,補充性,断片性
1 刑法の謙抑性
2 謙抑性からの要請
第3章 刑法の解釈
T 条文解釈の必要性と解釈の方法
1 条文解釈の必要性
2 解釈の種類と方法
(1)文理解釈と目的論的解釈/(2)条文解釈の方法
U 刑法における解釈の特徴 ――民法の解釈との違い
1 法律が予測していなかった事態への対処の方法
(1)民法の対応/(2)刑法の対応 *18 「疑わしきは被告人の利益に」の原則
2 刑法における拡張解釈と類推解釈
(1)拡張解釈の例/(2)類推解釈の例
3 拡張解釈と類推解釈の限界
(1)電気窃盗事件/(2)コピーの文書性/(3)わいせつ物
V 立場の違いが解釈を左右する
1 犯罪の実質に関する2つの見方
(1)2つのアプローチ/(2)結果無価値論 *19 結果無価値論/(3)行為無価値論
2 犯罪の成否にどう反映するか
(1)主観的違法要素/(2)主観的正当化要素
第4章 犯罪が成立するための要件(1) ――基本類型
T 法益の保護と犯罪の類型化
1 刑法で保護するだけの利益があるか ――法益論
(1)刑法の役割と法益の意義/(2)誰に帰属する法益か ――法益の種類/(3)刑事立法のラッシュ現象
2 犯罪の判断方法と犯罪論体系
(1)犯罪の成立を判断する方法/(2)犯罪論の体系と意義
3 犯罪の段階的判断と推定機能
(1)行 為/(2)構成要件該当性/(3)違法性/(4)責 任 *20 構成要件該当性による推定機能の扱い
U 目的的行為論の登場とその影響
1 故意犯と過失犯の区別
(1)結果無価値論による区別/(2)目的的行為論の主張 *21 目的的行為論を学ぶ
2 故意の内容と体系上の位置づけ
(1)故意説の主張/(2)責任説の主張
3 わが国の刑法学に対する目的的行為論の影響
V 犯罪を区別する「型」 ――構成要件論
1 犯罪を行う者はだれか ――犯罪の主体
(1)自然人処罰の原則と法人処罰 *22 その他の法人処罰
(2)人の属性が犯罪の成立を左右する(身分犯)/(3)背後であやつる者(間接正犯)
2 行為の種類が犯罪を区別する
(1)身体の動(作為)を処罰する犯罪(作為犯)と身体の静(不作為)を処罰する犯罪(真正不作為犯)/
(2)作為犯処罰の原則の意義
3 不作為による作為犯構成要件の実現 ――不真正不作為犯
(1)不真正不作為犯の正当化根拠 *23 改正刑法草案の提案
(2)不真正不作為犯の主体 *24 一般的救護義務
4 犯罪の成立要件としての結果
(1)結果の態様に応じた犯罪の分類 *25 挙動犯の否定/(2)犯罪の終了と法益侵害との関係 *26 行為事情
5 行為と結果のつながり ――因果関係論
(1)因果関係とは何か/(2)事実的因果関係とその確認方法(条件説) *27 択一的競合事例の扱い/
(3)刑法的因果関係とその確認方法(相当因果関係説) *28 米兵ひき逃げ事件/
(4)客観的帰属論による帰責範囲の限定 *29 仮定的因果関係
6 罪を犯す意思 ――故 意
(1)刑法38条1項の意味/(2)客観的事実の認識/(3)故意の態様/(4)認識と客観的事実が一致しない場合の扱い/
(5)予想外の経過をたどった結果発生の扱い
7 不注意な内心 ――過 失
(1)主観的構成要件要素としての過失/(2)認識なき過失と認識ある過失
8 故意以外の主観的要素を必要とする犯罪
(1)主観的要素の意義/(2)構成要件が規定する主観的要素/(3)構成要件に明示されていない主観的要素
W 社会が許さない行為と許す行為 ――違法性と違法(性)阻却
1 違法と違法(性)阻却の関係 ――違法阻却の根拠
(1)刑法の規定方法/(2)違法阻却の実質的根拠
2 法益を守るための反撃行為 ――正当防衛
(1)正当防衛の性質と構造/(2)正当防衛の成立要件 *30 対物防衛/(3)錯誤の扱い/(4)その他の論点
3 法益を守るための逃避行為 ――緊急避難
(1)緊急避難の構造と性質 *31 古典的な問題/(2)緊急避難の成立要件
4 正当性にもとづいて違法阻却される行為
(1)法令行為/(2)正当業務行為と正当行為/(3)正当行為性が問題となる事例
5 条文にない違法阻却事由 ―― 超法規的違法阻却事由
6 処罰に値しない行為 ―― 可罰的違法性論
(1)可罰的違法性論の意義/(2)違法性の量と質
X 社会が行為者を非難する ――責 任
1 成熟度が犯罪の成立を左右する ――責任能力
(1)責任能力 *32 部分的責任能力 *33 ?唖者規定の削除
(2)責任無能力・限定責任能力の規定方法と判定方法 *34 鑑 定 *35 鑑定の拘束力
2 行為が許されないことの認識 ――違法性の意識
(1)違法性の意識の要否/(2)「許されていない」と思わなかった
3 適法な行為が期待できない ――期待可能性の理論
(1)期待可能性論の意義/(2)期待可能性の判断基準
Y 処罰を左右する例外的な事情
1 処罰するための条件 ――客観的処罰条件
2 処罰を免除する条件 ――刑罰阻却事由
3 被害者が処罰を左右する ――親告罪
第5章 犯罪が成立するための要件(2) ――拡張類型
T 意図した結果が発生しなかった ――未遂犯論
1 結果が発生しなくても処罰されることがある
(1)既遂犯の処罰拡張類型 *36 予備罪と陰謀罪の規定/(2)未遂犯の規定と種類
2 犯罪の実現が妨げられた ――障害未遂
(1)障害未遂の意義/(2)実行の着手 *37 早すぎた結果の発生/(3)犯罪の不完成
3 自分の意思で犯罪実現を阻止した ――中止未遂
(1)中止未遂の特殊性/(2)中止未遂の成立要件
4 結果を発生させられない場合 ――不能犯
(1)不能犯の意義と種類 *38 幻覚犯,迷信犯,構成要件の欠缺/(2)障害未遂との区別の方法・基準
U 不注意も処罰されることがある ――過失犯論
1 不注意とその犯罪化
(1)過失犯の例外的処罰 *39 不注意の程度と過失犯
2 過失(犯)の実質
(1)過失犯の意義と構造/(2)旧過失論の主張/(3)新過失論の主張 *40「許された危険」の法理
(4)わが国特有の過失犯論
3 過失犯をめぐる論点
(1)管理・監督過失/(2)信頼の原則
V 複数の者が実現する犯罪 ――共犯論
1 さまざまな関与形態
(1)共犯現象と共犯論/(2)必要的共犯と任意的共犯
2 複数の者が対等に関与する共犯 ――共同正犯
(1)共同正犯の構造と成立要件 *41 同時犯 *42 片面的共同正犯と承継的共同正犯
*43 共同意思主体説/(2)共同すべき犯罪(158)
3 関与の程度に差がある共犯 ―― 従属的共犯(160)
(1) 2 つの従属的共犯/(2)従属的共犯の処罰根拠と従属性/(3)従属性の意味
4 共犯論における若干の問題
(1)共犯関係からの離脱/(2)共犯と錯誤
W 犯罪にも数がある ――罪数論
1 なぜ犯罪の数が問題になるのか
2 一罪と数罪
*44 単純一罪と単純数罪 *45 連続犯 *46 併合罪
3 犯罪の数とその扱い
(1)本来的一罪/(2)科刑上一罪 *47 行為の単複
4 犯罪の数は何を基準に決定されるか
第6章 どのような刑法が適用されるのか ――刑法の適用範囲
T 刑法の適用範囲はなぜ問題になるのか
U 刑法の時間的適用範囲と場所的適用範囲
1 刑法の時間的適用範囲
(1)事後法の禁止/(2)事後法の判断
2 刑法の場所的適用範囲
(1)前提としての国内犯処罰 *48 訴訟障害/(2)処罰拡張としての国外犯/(3)刑事司法における国際協力
*49 外国判決の効力
第7章 刑法も不変ではない ――刑法改正の動向と内容
T 実現しなかった刑法典の全面改正
1 全面改正に向けた動き
(1)刑法の安定性/(2)全面改正の機運と動向
2 改正刑法草案の内容と社会の反応
(1)草案の内容/(2)草案に対する反応
U 刑法典の部分改正
1 第2次世界大戦前の改正
2 終戦から刑法典の口語化までの改正
3 刑法典の口語化とその後の改正
V 特別刑法における立法動向
1 新たな事態への対応
(1)特別刑法による対応/(2)薬物犯罪への対応/(3)軽微な犯罪への対応
2 犯罪の国際化への対応 *50 コントロールド・デリバリー *51 マネーロンダリング罪 *52 特別刑法における没収・追徴
*53 不法収益の推定
3 刑法理論・刑事法上の原則と処罰の必要性(刑事政策)との不調和?
第8章 少年の犯罪に対する特別な扱い ――少年司法システム
T 少年司法システムの独立
1 欧米における動向
(1)少年観の変化/(2)子どもの救済運動と福祉モデル少年法制 *54 大陸法系の少年法制
2 日本における動向
(1)懲治からの出発 *55 江戸期における犯罪少年の扱い/(2)感化から司法システムへ
U 1922年少年法(旧少年法)とその内容
1 少年保護と処遇における二分体制の確立
2 旧少年法の内容
(1)旧少年法の性格と構造 *56 刑事処分の対象にならない少年/(2)刑事事件における特別な配慮/
(3)保護事件としての扱い
V 1948年少年法(現行少年法) ―――保護主義の徹底
1 福祉モデル少年法制の採用
(1)現行少年法の基本的性格/(2)少年法の管轄
2 少年の保護事件
(1)審判の前段階 *57 全件送致主義の例外/(2)少年審判/(3)保護処分とその執行 *58 強制的措置 *59 保護観察
3 少年の刑事事件
(1)逆送制度 *60 交通事犯の特殊な扱い/(2)逆送事件の扱い
4 同一性情報の報道禁止
(1)従前の対応/(2)状況の変化
W 少年法をめぐる動向
1 少年法改正
(1)実現しなかった抜本的改正/(2) 2000年の改正/(3)その後の改正
2 今後の課題
(1)国際的動向/(2)対応の二分化 *61 修復的司法
第9章 犯罪を犯した精神障害者に対する特別な扱い ――心神喪失者等医療観察法
T 新法制定に至るいきさつとその法的な性格
1 犯罪を犯した精神障害者に対する従来の処遇
(1)措置入院の概要/(2)措置入院の問題点
2 心神喪失者等医療観察法の制定への流れ
(1)治療処分・禁絶処分の導入をめざして ――1974年改正刑法草案/(2)保安処分制度導入の失敗と精神保健法制定/
(3)措置入院の拡充を求める動き ――道下研究/(4)心神喪失者等医療観察法の制定に至る社会的な動き
U 医療観察法のあらまし
(1)法律の目的/(2)新たな司法処分制度の創設/(3)手続の流れ/(4)決定の種類
V 改善された点と今後への課題
1 治療水準の向上
2 問題点@ ―――検察官の強い権限と捜査段階の簡易鑑定
(1)検察官の広範な裁量/(2)簡易鑑定にともなう問題/(3)訴追か医療かを判断する専門機関の導入
3 問題点A ―――責任能力と処遇の申立てのリンク
(1)治療は責任能力がない場合にはじめて行われる/(2)治療は刑罰執行の適否にかかわらず行うべき/
(3)刑事施設内の受刑者に対する精神医療
4 問題点B ―――合議体の構成
(1)審判をするのは裁判官と精神保健審判員の2名/(2)精神保健参与員も合議体に加えるべき
5 問題点C ―――治療方針の改善
(1)治療反応性がないかぎり処遇の対象とならない/(2)治療の受け皿の欠如/
(3)人格障害者に対しても治療を行う諸外国/(4)疑わしきは医療に
6 問題点D ―――処遇困難者への対応
(1)取り残された処遇困難者/(2)指定入院医療機関の活用
事項索引