退職金切り下げの理論と実務
    ―つまずかない労務管理―

労務・社会保険法研究会 編

【研究会・執筆者メンバー】

秋山清人 (弁護士 山崎・秋山法律事務所)
岩崎通也 (弁護士 渥美総合法律事務所)
大谷惣一 (弁護士 シュエット法律事務所)
隈本源太郎 (弁護士 隈本綜合法律事務所)
酒井俊介 (弁護士 東京八丁堀法律事務所)
山烈 (弁護士 竹田真一郎法律事務所)
中重克巳 (弁護士 山田・尾ア法律事務所)
野口彩子 (弁護士 シグマ法律会計事務所)
福崎剛志 (弁護士 鳥飼総合法律事務所)
松井創 (弁護士 山崎・秋山法律事務所)
南山佳仁 (弁護士 野田総合法律事務所)
山田大護 (弁護士 菊池総合法律事務所)
石井清香 (社会保険労務士 総合労務コンサルタント石井清香事務所)
織田純代 (社会保険労務士 社会保険労務士法人日本人事)
金子浩 (社会保険労務士 社会保険労務士法人開東社会保険労務事務所)
小泉桂太 (社会保険労務士 社会保険労務士法人開東社会保険労務事務所)
酒井登志枝 (社会保険労務士 OfficeSAKAI)
時枝慎一郎 (社会保険労務士 時枝社会保険労務士事務所)
中村友美 (社会保険労務士 社会保険労務士法人開東社会保険労務事務所)
三平和男 (社会保険労務士 三平社会保険労務士事務所)
山本喜一 (社会保険労務士 社会保険労務士法人日本人事)


【目  次】

はじめに

◆第1部 チェックシート◆

退職金の不利益変更チェックシート 2
チェックシートの使い方 4

◆第2部 Q&A◆

◇第1章 総 論(Q1〜Q15)

〔退職金見直しの必要性〕
Q1 最近、退職金制度の見直しが必要という話を聞きます。なぜ今退職金が大きな問題になっているのでしょうか。 12
〔見直しを支援してくれる組織、体制〕
Q2 当社は、税制適格退職年金の廃止に伴い、会社の退職金制度の見直しを考えていますが、どのような制度にしていくことが当社にとってよいのか、またどこから手をつければよいのか、見当がつきません。誰に、どう相談すればいいのでしょうか。 14
〔税制適格退職年金制度の廃止に伴う退職金制度廃止〕
Q3 税制適格退職年金制度が廃止されることに伴って、当社は、退職金制度自体をなくしてしまいたいと思っています。そのようなことは可能でしょうか。 16
〔退職金規程と退職金の減額・不支給〕
Q4 退職(年)金規程を設けていれば、必ず定めたとおりに支払う必要があるのでしょうか。そもそも設けなくてもよい制度だということであれば、懲戒解雇の場合や退職後同業他社に就職する場合は、退職金を減額ないしは不支給とすることは可能なのではないでしょうか。会社の財政状況が悪いときは支給しない、などとはできないのですか。 17
〔退職金の分割払い・現物支給)
Q5 当社の就業規則には「退職後20日以内に退職金全額を支払う」との規定がありますが、これを分割払いにしたり、あるいは退職後1年以内に支払うように変更することはできませんか。また、退職金の一部を現物支給とすることはできないでしょうか。 19
〔退職金制度の新旧切替え時における運用〕
Q6 当社はXX年6月1日から新退職金制度に移行することを検討していますが、この場合、XX年5月31日までに退職する労働者については旧退職金制度に基づいて全額支払わなければならないのでしょうか。また6月1日以降に退職する労働者については新退職金制度に基づいて計算した退職金のみ支払えばよいでしょうか。 22
〔倒産時の退職金の扱い〕
Q7 不況の影響で、退職金の減額をしなければ倒産するしかない状況です。仮に倒産した場合、従業員の退職金はまったく保証されないのでしょうか。 24
〔退職金に係る会計基準(概要)〕
Q8 退職給付会計とか、退職給付引当金などという言葉を聞きますが、よくわかりません。確定拠出型にすればよいというような話も聞きましたが、会計基準の変更とどう関係があるのでしょうか。 27
〔退職金制度の具体的変更方法@〕
Q9 退職金制度の変更にあたってはどのような変更方法があるのでしょうか。全労働者の同意を得る必要がありますか。 29
〔退職金制度の具体的変更方法A〕
Q10 退職金の変更方法に3つあることはわかりました。それぞれ、どのようなポイントに留意して手続を進める必要があるでしょうか。また、変更の効力について将来問題になるのはどのような場合でしょうか。 31
〔退職金が規定された労働協約と就業規則の関係〕
Q11 当社には、労働組合と締結した労働協約と就業規則の両方に同じ退職金の規定があります。今回、退職金制度を見直すにあたり、労働協約と就業規則の両方を見直す必要があるでしょうか。また、労働組合が協約見直しに同意しない場合、就業規則の変更だけで退職金の見直しが可能ですか。 34
〔退職金制度の種類と運用リスク〕
Q12 退職金の制度といっても、どんな制度があるのか、それぞれどのような特徴があるのかよくわかりません。概要をわかりやすく説明してほしいのですが。また、退職金の運用リスクを負わなくてすむ制度があるとも聞きました。 37
〔派遣社員に対する退職金〕
Q13 人材派遣会社を営んでおります。派遣先から有能な人材を引き抜かれてしまうため引き抜き対抗策として退職金制度を検討していますが、実際に導入している会社はあるのでしょうか。 40
〔定年後の再雇用制度と退職金〕
Q14 高年齢者雇用安定法に基づき、退職者を再雇用しましたが、会社は彼らに対しても退職金の支給義務はあるのでしょうか。 42
〔パートタイマーの退職金〕
Q15 当社には正社員を対象とした就業規則と退職金規程があり、パートタイマーは適用対象から除外しているのですが、パートタイマーの就業規則はありません。長年勤めたパートタイマーが退職金を求めてきたのですが、支払う義務があるのでしょうか。 44

◇第2章 不利益変更(Q16〜Q50)

〔売上の激減〕
Q16 最近の不況で売上が激減しました。赤字こそ免れましたが、退職金の負担が非常に重い状況です。退職金減額は可能でしょうか。 47
〔退職金に充てる資金の枯渇〕
Q17 退職金に充てる資金が枯渇しています。退職金減額は可能でしょうか。 48
〔成果主義移行に伴う退職金の減額〕
Q18 成果主義移行に伴い従業員の一部への退職金支給額が減額してしまいます。考え方と対処法は? 50
〔赤字経営に転落してしまった場合〕
Q19 当社は今期から赤字経営に陥ってしまいました。退職金の減額は可能でしょうか。 51
〔業績不振とはいえない会社における退職金減額〕
Q20 会社の業績は悪くないのですが、退職金の減額が認められる余地はないのでしょうか。 53
〔借入金返済資金確保のための減額〕
Q21 従業員に対しこれまでどおりに退職金を支払わなければならないとすると借入金の返済ができなくなりそうです。退職金減額は可能でしょうか。 55
〔大口取引先の倒産〕
Q22 大口取引先が倒産してしまいました。このような場合でも退職金を減額することは認められないのでしょうか。 56
〔更生会社における退職金の減額〕
Q23 会社更生の申立てを検討していますが、会社更生手続に入った更生会社は、退職金の減額は可能でしょうか。 57
〔退職年金の不利益変更〕
Q24 退職年金の支給額が年々増加し、負担になっています。退職年金の改定(不利益変更)は可能でしょうか。 59
〔合併に伴う退職金水準の変更〕
Q25 合併にあたり各社間の退職金水準を調整したいのですが、どのような点に注意すべきでしょうか。 60
〔給与体系整理の一環としての退職金減額〕
Q26 従来の給与体系を整理するにあたり、退職金の減額を実施したいのですが、注意点を教えてください。 62
〔倒産回避目的による退職金の不利益変更〕
Q27 退職金を減額しないと倒産の危機に陥る状況です。退職金制度を減額できるでしょうか。 63
〔退職金の減額・廃止の際の代替方策〕
Q28 退職金の減額・廃止を行う場合、その代替措置として検討すべき方策を教えてください。 65
〔退職金水準の調整〕
Q29 同業他社と比べて退職金が高額です。他社と同等まで減額したいのですが、認められますか。公務員と同水準にまで削減する場合はどうでしょうか。 67
〔退職金の減額割合〕
Q30 退職金は何パーセントまで減額することが可能でしょうか。 69
〔定年延長の導入〕
Q31 定年延長制度の導入を考えていますが、併せて退職金の減額をすることは認められますか。 70
〔再就職支援策の評価〕
Q32 当社では、退職金の減額と並行してリストラも進めていきたいと考えています。転籍等で雇用を確保できない従業員に対しては再就職支援金を支給する予定ですが、退職金の減額にどのように影響するのでしょうか。また、支援金以外に有効な再就職支援策にはどのようなものがあるでしょうか。 72
〔経費削減策と退職金減額〕
Q33 大規模な経費削減策を実施してきましたが、いよいよ退職金の減額に手をつけるしかなさそうです。経費削減策を進めてきたことは退職金の減額に際して有利に評価されるのでしょうか。 74
〔一定期間の据置き(経過措置)〕
Q34 退職金をいきなり減額するのではなく、経過措置としてしばらく現行制度を維持し、退職金を据え置いた上で減額を実施しようと考えています。このような方法は有効でしょうか。 76
〔過去の減額改定に基づく退職金支給〕
Q35 当社では3年前に退職金規程を減額改定しました。しかし、実際は、改定前の退職金規程にしたがい、従前どおりの退職金額を支給してきました。この度、改定後の退職金規程にしたがって退職金を支給したいのですが、認められるでしょうか。 77
〔退職金減額後に支払原資を確保した場合の措置〕
Q36 当面は退職金の支払原資の確保が困難なため退職金の減額を行いますが、支払原資ができれば改めて退職金支払いたいと考えています。どのようにすればよいでしょうか。 79
〔退職年金の給付利率引下げ〕
Q37 退職年金の給付利率を引き下げたいのですが、どのような点に注意するべきですか。 80
〔年金方式から一時金方式への変更〕
Q38 年金を一時金として支給したいのですが、どのような点に注意すべきですか。 82
〔退職後の従業員に対する年金の減額〕
Q39 退職後の退職年金受給者の受給額を減額することはできますか。その方法はどうしたらよいでしょうか。 84
〔不利益変更と従業員(労働組合)との交渉〕
Q40 当社では、従業員の退職金の減額を検討しています。この場合、従業員との間で交渉をすることが重要だと聞いたのですが、どのようにしたらいいのかわかりません。不利益変更をする場合に、従業員との協議をどのようにしたらいいか教えて下さい。 86
〔個別契約、就業規則、労働協約の関係〕
Q41 今回、不利益変更をするに際して、個別契約、就業規則、労働協約という用語をききます。しかし、この用語の示す内容と、各々の法律関係がわかりにくいです。どのようになっているのでしょうか? 88
〔複数の労働組合がある場合〕
Q42 社内に複数の労働組合がある場合、どのように交渉すればよいでしょうか。 90
〔労働組合が協議に応じない〕
Q43 労働組合が協議に応じない場合、どうしたらよいでしょうか。 91
〔反対している非組合員への対応〕
Q44 労働組合とは合意ができたのですが、反対している非組合員がいます。どのように手続を進める必要がありますか。 93
〔労働協約による一部の組合員の退職金改定〕
Q45 労働協約の締結によって、一定の年齢層や一定の職種限定の組合員が対象となる退職金の改定を行うことはできるでしょうか。 95
〔労働組合との合意の方法〕
Q46 労働組合との合意の方法にはどのようなものがありますか。覚書程度でよいのでしょうか、労働協約を結んだ方がよいでしょうか。 96
〔合同労働組合(個人加入労働組合)との交渉〕
Q47 当社には、合同労働組合(個人加入労働組合)に加入している者がいます。この場合、合同労働組合(個人加入労働組合)とも交渉をしなければ、不利益変更はできないのでしょうか。 97
〔不利益変更における従業員の個別同意の意味〕
Q48 当社は、退職金の減額を考えています。当社には労働組合がなく、労働組合との交渉や合意はできません。この場合、従業員の個別の同意を得て退職金の減額をすることは可能でしょうか。 99
〔労働組合がない場合における従業員の代表者との協議〕
Q49 当社には従業員は多数いますが、労働組合はありません。この場合、不利益変更をするにあたって、従業員の代表者と協議をすることは有効でしょうか。どういう人物を代表者とすべきでしょうか。 100
〔退職金の減額における職場説明会の有効性〕
Q50 退職金の減額にあたり職場説明会を開催することは有効でしょうか。注意点はありますか。 102

◇第3章 退職金制度(Q51〜Q70)

〔内部留保型と外部拠出型の違い〕
Q51 内部留保型(自己完結型)と外部拠出型の退職金制度の違いは何でしょうか。 105
〔中小企業退職金共済(中退共)制度〕
Q52 中小企業退職金共済制度の概要と留意点(メリット、デメリット)について教えてください。 106
〔特定退職金共済(特退共)制度〕
Q53 特定退職金共済制度の概要と留意点(メリット、デメリット)について教えてください。 110
〔企業型確定拠出年金(401k)〕
Q54 確定拠出年金(企業型)について概要と留意点(メリット、デメリット)について教えてください。 113
〔規約型確定給付企業年金〕
Q55 規約型確定給付企業年金について概要と留意点(メリット、デメリット)について教えてください。 116
〔キャッシュバランスプラン〕
Q56 キャッシュバランスプランについて概要と留意点(メリット、デメリット)について教えてください。 118
〔退職金前払い制度〕
Q57 退職金前払い制度を導入する際の留意点(メリット、デメリット)について教えて下さい。また、選択制により前払い制度を導入することはできるでしょうか。 119
〔厚生年金基金〕
Q58 厚生年金基金制度の概要と留意点(メリット、デメリット)について教えてください。 121
〔民間保険商品の退職金への活用〕
Q59 民間保険を活用する際の留意点(メリット、デメリット)について教えてください。 123
〔適格退職年金〕
Q60 適格退職年金制度の特徴について教えてください。 124
〔適格退職年金制度の解約と退職金制度の関係〕
Q61 適格退職年金制度を解約し、積立金を分配し、退職金制度自体を廃止してしまいたいのですが可能でしょうか。また、その場合の注意点はあるでしょうか。 126
〔適格退職年金の資産移管について〕
Q62 適格退職年金の資産の移管ができる退職金制度について教えてください。また、移行時の積立不足解消の要否や事務経費負担等についても教えてください。  127
〔厚生年金基金からの脱退〕
Q63 厚生年金基金を脱退する際、または解散する際の留意点と経費負担について教えてください。 128
〔人事評価と退職金制度〕
Q64 人事評価を退職金制度にうまく反映させたいのですが、どうしたらよいでしょうか。
また、会社への貢献度や懲戒などについても大きく反映させていきたいのですが、どの制度が適しているのでしょうか? 129
〔退職給付会計の対象となる退職金制度〕
Q65 退職給付会計の対象になる制度はどれでしょうか。
また、各制度の税制面における特徴について教えてください。 130
〔退職金制度の給付水準引下げと退職金制度の関係〕
Q66 各退職金制度において給付水準を引き下げるためにはどのようにしたらよいでしょうか? 131
〔中小企業に適した退職金制度〕
Q67 中小企業に適した退職金制度は何でしょうか。 133
〔急成長する企業の退職金制度〕
Q68 今後、急激に成長が見込まれる会社における制度選択上の留意点は何でしょうか。 135
〔複数の退職金制度を導入する場合の留意点〕
Q69 複数の退職金制度を組み合わせて導入する際の留意点と具体例を教えてください。 137
〔退職金制度のメリット・デメリット一覧〕
Q70 各制度のメリット、デメリットについて事業主の視点及び従業員の視点でまとめてください。 139

◇第4章 実 務(Q71〜Q80)

〔合併による退職金規程の統一〕
Q71 当社(A社)は設立6年の会社で、社員数は約300名です。退職金規程は退職時の基本給に勤続年数に応じた掛率を掛けて算出するシンプルな制度です。
社員は20代が大半で定年退職者は出ておりません。モデルとしては40年勤務して定年退職した場合でも500万円程度の退職金となります。
今回、当社が同業のB社(社員30名)を吸収合併することになったのですが、B社の退職金規程はポイント制の退職金制度となっており、モデル退職金(40年勤続)で定年時2,000万円となっております。
当社としては、B社の社員については従来の退職金規程の水準を維持した形として、当社の退職金規程を部分的に改定することで対応したいと考えていますが、このようなことは可能でしょうか。ただ、他方では、B社の退職金水準は高すぎるという思いもありますし、当社の従業員が不公平感を持つことも考えられますので、可能であればB社の社員にも当社の退職金規程を適用することにしたいとも考えています。その場合の問題点や手法についても教えて下さい。 143
〔適格退職年金制度の廃止と確定拠出年金制度への移行〕
Q72 当社は、適格退職年金制度を導入しておりますが、税制適格退職年金の廃止に伴い、制度の移行および資産の移管を検討しております。
確定拠出年金制度に移行した場合には、運用利率が予定利率より低下した場合でも会社が掛金を追加拠出する必要がないという話を聞きましたが、企業型確定拠出年金制度に移行し、これまで積み立ててきた金額と同じ額を掛金として支払えば、労働条件の不利益変更にはならないのでしょうか。
もし、このような方法に問題があるのであれば、退職金規程で定める支給基準(支給金額)は変えずに移行することも考えたいと思いますが、その場合には問題はないでしょうか。また、従業員との間で必要な手続はありますか。 145
〔退職金規程に規定のない上積み退職年金の廃止〕
Q73 これまで、業績が好調であったため、ここ数年来の退職者には、退職年金規程による退職金額に上乗せして退職年金を支給しておりました。しかしながら、昨年からの業績不振により、今後定年をむかえる従業員に対しては、退職年金規程による退職年金の支払いだけでも精一杯で、とても上乗せして退職年金を支給できる状況にはありません。今後、定年退職をする従業員に対して上乗せ分を支払わず、規定の退職年金のみを支払うことは不利益な取扱いとしてできないのでしょうか。また、既に退職した従業員に対しても上乗せ部分について減額したいのですが、そのようなことはできるのでしょうか。 147
〔賃金規程変更に対応した退職金規程の見直し〕
Q74 当社は、従来、就業規則において、基本給、職務給及び諸手当の三本立ての賃金体系を採用しておりましたが、3年前から、基本給と職務給とを合わせた基本給と諸手当の二本立てとする賃金体系に改めました。他方、退職金規程では、基本給に勤続年数に応じた乗数を乗じた金額を退職金として支払う旨定めておりましたが、担当者の過誤により、上記賃金体系の変更に伴う改定をせずにいたため、職務給までが基本給の一部として退職金計算の基礎となる事態が生じました(そのため、新賃金体系下では、旧賃金体系下に比して、計算上退職金額は増加することになります。)。
賃金体系変更後、数名の退職者が出ており、当社としてはやむなく、新賃金体系下での基本給を基礎として退職金額を支給してきましたが、今後、退職者が増加することが予想されるため、この際、退職金規程を改定し賃金体系の変更に即応した新規定にしようと考えております。このような変更は可能でしょうか。 150
〔グループ会社間における退職金支給水準の調整〕
Q75 当社は、ある会社の発行済株式総数の過半数を取得してこれを子会社としました。この子会社は、ここ10年程、ぎりぎり黒字を確保するのがやっとという経営状態で、当社及び他の子会社の従業員と積極的な人員交流を行い、停滞した職場の雰囲気を打破する必要があると思われました。しかし、この子会社は、当社及び他の子会社と比較し、給与とくに退職金支給水準が相当に高く、これを低減して均衡を図らなければ、人事交流を推し進めることは問題がありました。
そこで、思い切って、当社及び他の子会社と同一水準まで退職金支給額を引き下げる旨の就業規則の変更をすることとし、過半数を組織する労働組合と交渉のうえ、その賛同を得ましたが、一部の従業員は就業規則の変更に反対をしております。就業規則の変更の効力は、これらの者にも及ぶでしょうか。 152
〔中小企業退職金共済制度によって労働者に支払われた退職金の一部返還を求めることは可能か〕
Q76 当社は、中小企業退職金共済法に基づき、退職金共済契約を締結していますが、業績が悪化しており、毎月の掛金の支払負担を軽減したいと考えています。現在、就業規則には、退職金について定めた規定はありません。そこで、退職金に関する規定を就業規則に設け、自己都合退職の場合、中小企業退職金共済制度によって支払われる退職金額が、就業規則により算出した退職金の金額を上回るときは、従業員はその超過する部分を会社に返還する旨を定め、その返還金を毎月の掛金の支払いに充てたいと考えています。何か問題が生じる可能性はあるのでしょうか。 155
〔厚生年金基金の年金給付の減額に受給者が同意しない場合、受給者の年金減額は可能か〕
Q77 当社厚生年金基金は、厚生年金保険法上の厚生年金ですが、当社の業績悪化を契機として財政状況が悪化しています。そこで、同基金から年金給付を受給している者の給付額を減額する措置を講じたいと考えています。年金給付の受給者の中には、給付額の減額に反対する者も多数いるのではないかと予想されますが、問題は生じないでしょうか。また、減額に反対する者に対し、どのように対処すべきでしょうか。 157
〔労使慣行の成立及び成果主義的退職金制度の導入〕
Q78 当社には、退職時の基本給に勤続年数に応じた掛率を乗じた退職金が支給されるという退職金規程がありますが、実際には今までそれにしたがって退職金を支給したことはなく、各従業員に会社が掛けている生命保険の解約返戻金をそのまま退職金として支払っていました。それでも退職金規程に定める額とあまり変わらなかったので文句は出ませんでしたが、近年、解約返戻金の額が少なくなり退職金規程の額と乖離するようになってきてしまいました。しかし、これまで従業員からのクレームはありませんでしたので、今後も、解約返戻金の額が退職金であると主張することができないでしょうか。もし、それができないのであれば、退職金規程に定める額を平均30%程度減額すれば今後も何とか全員に支払えるという状況ですので、退職金規程を変更し、退職金規程の支給率を切り下げたいと思っています。ただ、従業員の能力にも差がありますし、全員に対して一律に30%減額するのもどうかと思っているところがありますので、退職金規程を変更するのであれば、営業成績や管理職としての在籍年数に応じて退職金支給率の切り下げ率を変えたいと思いますが、このようなことは可能でしょうか。 159
〔退職金制度の廃止と労働組合との交渉〕
Q79 当社は3期連続赤字の状況にありますが、徹底したコスト削減等の企業努力により赤字幅はようやく減少してきており、来期は若干の黒字を達成できそうな見込みです。しかし、その翌年以降にも毎年退職者が継続して出てくることが予定されており、退職金支給額の20%程度をカットしない限り、また毎年赤字決算に転落してしまいます。これ以上の企業努力によりコストを削減することは非常に困難ですし、今後当社が若干でも利益を出しつつ存続していくために、この際、退職金規程を廃止してしまいたいと考えています。もちろん、在籍中の従業員には何らかの手当が必要とは思いますが、どのような手当をすれば退職金規程を廃止できますか。ところで、当社には労働組合が2つ存在し、多数組合は、真摯に説明すれば制度の変更に合意してくれると思いますが、少数組合については合意してくれるかわからない状況です。 163
〔適格退職年金制度の廃止と確定拠出年金への移行〕
Q80 当社では、適格退職年金制度による退職年金規程を設けて、退職者に対して当該規程にしたがって毎月年金を支払っていますが、適格退職年金を廃止して確定拠出年金に移行することを検討しております。退職年金規程には、経済情勢の変動等により当該規程を改廃することがある旨規定されていますが、この規定に従い、退職年金規程を変更して、すでに退職した社員に対して退職年金の一括支給をすることは可能でしょうか。 167

◆第3部 判例解説◆

@大曲農協事件 173
〔農業協同組合の合併に伴う退職金規程の不利益変更が有効とされた事例〕
A日魯造船事件 176
〔更生計画遂行中の造船会社が、従業員の退職金に関する就業規則の規定を変更して、退職金を減額(最高で15.6%の引下げ)し、15年間の分割払とすることとした就業規則の変更が有効とされた事例〕
B空港環境整備協会事件 179
〔給与制度改正の一環として退職金規程の支給率等を変更したことが有効とされた事例〕
C名古屋学院事件 182
〔学校法人において、独自の年金制度を廃止する(100%引き下げる)内容の就業規則等の変更が有効とされた事例〕
Dアスカ事件 186
〔出向先との労働条件のバランスをとる必要があることを主たる理由として従業員の退職金を従来の約3分の2ないし約2分の1に減少させる退職金規程の改定が無効とされた事例〕
E月島サマリア病院事件 189
〔倒産の危機に至らない個人病院において、退職金を47%引き下げる内容の就業規則変更が、代償措置や従業員の明示的な受容がない状況では合理性がないとされた事例〕
Fドラール事件 192
〔退職金支給の有無及び支給額を取締役会で個別に決定できるという規定を就業規則に設けたことが、許されない不利益変更であるとして無効とされた事例〕
G更生会社新潟鐵工所(退職金第1)事件 194
〔更生会社において、支給率を80%引き下げる内容の退職金規程の変更が有効とされた事例〕
H中谷倉庫事件 198
〔年間売上げの3分の2を占めていた取引先が倒産したことから、連鎖倒産を回避するために退職金支給額を半額とする旨の退職金規程改定が有効とされた事例〕
I中部カラー事件 201
〔適格退職年金制度を廃止し、新たに、中小企業退職金共済制度に移行させ、併せて、企業内積立として養老保険を採用する旨の就業規則の変更が、従業員に対し実質的に周知されたとは認められないとして、無効であると判断された事例〕